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ルー・ドナルドソン(LOU DONALDSON)
「ソフィスティケイテッド・ルー」(SOPHISTICATED LOU) |
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ルー・ドナルドソン(LOU DONALDSON)の「ソフィスティケイテッド・ルー」
(SOPHISTICATED LOU)です。
BLUENOTEのオリジナル盤になります。
レコード番号、BN-LA024-F、ステレオ仕様です。 |
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パーソネルはアルト・サックスにルー・ドナルドソン、その他ストリングス等です。すべてのメンバーまではよく分かりませ
んが、ピアノにデレク・スミス、ギターにジェイ・バーリナー、ベースにロン・カーターとリチャード・デイヴィス、ドラムスにグラ
ディ・テイトなどとなっています。その他はストリングスで、当時流行のオーバーダビングでしょう。
このレコードは、1972年の12月に録音され、73年にリリースされたもので、ジョージ・バトラーのプロデュースによりま
す。ストリングス・セクションのアレンジはウェイド・マーカスが担当しています。
70年代に入って、プロデュースも含めてルーのレコードはレベルが低下したと巷間言われています。ただこのアルバム
は、それらの中でも例外的にそれなりの程度を維持した好盤かもしれず、聴いてて投げ出したくなることはありません。
収録曲は、A面に「You've Changed」、「Stella By Starlight」、「What Are You Doing The Rest Of Your Life?」、「The
Long Goodbye」の4曲、B面に「You Are The Sunshine Of My Life」、「Autumn In New York」、「Blues Walk」、「Time
After Time」の4曲、計8曲になります。
さて、A面の1曲目は「You've Changed」です。「貴方は変わったわ」とでも訳せるタイトルですが、古くはビリー・ホリデー
やサラ・ヴォーンなどが歌っています。最近ではジョニ・ミッチェル、ごく最近ではイーデン・アトウッドとかニーナ・フリーロン
などの新進ボーカリストも採り上げている、既にもはやスタンダードな名曲ですね。ルーは思い入れたっぷりに奏します。
バックのリズム・セクションはあんまり聴こえません、ストリングスのバッキングでルーが歌っているっていう感じです。途
中のギターが雰囲気を盛り上げますが五月蝿くならず進みますから、しっとりと聴けますね。
2曲目は「Stella By Starlight」で、超有名なスタンダードです。「星影のステラ」と邦訳される曲で、気をつけないと「星影
のワルツ」と混同してしまいそうです。しかし、後者のプレイヤーは天下の「千昌夫」ですから間違う根拠もないんですけど
ね…。ルーは中々快調に飛ばしてまして、アドリブ部分は堅実なバッキングなのでストリングスが聴こえないような感じで
す。この曲に関してはストリングスは不要だったかもしれません。
3曲目は「What Are You Doing The Rest Of Your Life?」、「将来、どうするの?」的な意味になりますかね。これは196
9年だったかに公開された映画の楽曲で、作曲はあのミシェル・ルグランです。ルグランってのは器用な人で、新婚旅行
でアメリカに訪れた際、マイルスと名盤をモノにしてます。あれもいいレコードです。この映画は幾つかアカデミー賞を取っ
たらしくて、早速アルバムに採用する辺りに商業主義が垣間見えて喜ばしい限りです。これもまた思い入れたっぷりの演
奏で、ムード・テナーと間違えそうな出だしで笑かします。しかし、ルーのベロベロ・フレーズは余人の及ぶところではあり
ません、ワッハッハ。
4曲目は、これまた有名な「The Long Goodbye」です。「ロング・グッドバイ」ってのは1972年頃に制作された、エリオッ
ト・グールド主演の映画で、音楽担当は後年に「スター・ウォーズ」や「スーパーマン」で有名になったジョン・ウィリアムズ
です。この映画は見たことないのでよく知らないんですが、フィリップ・マーロウの話しのようです。マーロウなら「マー君」
ですね。今や楽天の主力投手である「マー君」は頑張ってますね。何とも朴訥そうな顔付きで、ひたむきそうに見えます
から陰ながら応援してます。で、演奏は何やら物憂げなテーマで「長いお別れ」を表出してますが、どことなくトボケタ感じ
がルーさんでした。
B面に移って1曲目は「You Are The Sunshine Of My Life」です。ご存知、スティーヴィー・ワンダーのヒット曲で、
「Talking Book」(当時は収録曲の「迷信(Superstition)」が邦題になっていたアルバム)に入っていましたね。しかし、考
えてみるとスティーヴィーのアルバムがリリースされたのが1972年ですから、まったく同年にこの曲を採り上げているん
ですね。ヒットに敏感というか何というか…。イントロからスティーヴィーのとほとんど同じパターンで進みます。テーマをな
ぞっているうちは然程でもないんですけど、途中からはやっぱりルー節のアドリブで爽快です。原曲は元々ほぼ完成され
た見事な曲ですから、よほど変なアレンジをしない限り聴いててイヤになろうはずがありません。
2曲目が「Autumn In New York」、これも有名な曲です。古くはパーカーもストリングスとやってたように思います。作詞作
曲がかのヴァーノン・デューク、歌詞が今やアホみたいですけど、素直に秋の情感を楽しみましょう。同名の映画が2000
年に公開されていましたね。主演がリチャード・ギアとウィノナ・ライダーで、若い娘をたぶらかすのが毎度おなじみプレイ
ボーイ役のリチャード・ギアでした。相手役のウィノナ・ライダーは不治の病に侵されており、悲しい結末になるという、よく
あるパターンのラブ・ストーリーで、結構流行ったように記憶します。しかし、リチャード・ギアはこういう役どころが多くて腹
が立ちますね。「愛と青春の旅立ち」から始まって「プリティー・ウーマン」とか、何とも羨ましい。さて演奏は、ルーの哀愁
漂うプレイの後、ピアノとベースがブリブリやってます。一旦はちょいと劇的に振って、またもやルーの懐かしいフレーズに
戻っておしまい。別に何ということもないんですけど、こういうのがルーさんは似合ってますか。「ニューヨークの秋、なぜそ
んなに魅せてくれる?…鋼鉄の谷間に輝く人波と、光る雲…新しい恋をもたらす、ニューヨークの秋、傷ついた心を癒して
くれる、それがニューヨークの秋…」ってなもんで、郷愁を誘います。
3曲目がお馴染みの「Blues Walk」。ルーのオリジナルで1958年に同名のアルバムを1500番台でリリースしていま
す。これがルーの諸作で最も売れたものだそうです。ここではストリングスをバックにマイペースで進みます。やけに合っ
ているのが笑かしますね。途中で、多分ロン・カーターのベンベン・ソロが聴けて、これはスピーカーの調整にもってこいの
演奏です。と思っていたら唐突に終わっていました。
最後の曲は「Time After Time」、「再三再四」ですね。1984年のシンディー・ローパーが歌ったアレとは違いますので、
お間違いなきよう。これはそれよりさらに40年近く前にサミー・カーンとジュール・スタインが作った曲で、映画の楽曲でし
たがすっかりスタンダードになりました。ルーは相変わらずのマイペースで、途中ではエレピとフルートの響きが中々いけ
てます。フルートはジョー・ファレルじゃないかと言われていますね。
で、総じてコンテンポラリーな流行歌やスタンダードなどを題材にして、ルー・クインテットに後からストリングスを被せて、
CTIのウェス・モンゴメリー路線を真似たアルバムというのが実体ではあります。
まあ、どんな状況であっても「ルーはルー」ということで、まったく自分のペースを乱さずにプレイするのは彼ならではです
ね。「ルー」といっても、最近またまたテレビに登場している「ルー大柴」とは別人ですよ。 |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)
「オーレイ!」(OLAY!) |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)の「オーレイ!」(OLAY!)です。
MERCURYのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。
レコード番号はSR60085。 |
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このレコードは1957年10月頃に録音され、1958年だったかにリリースされたもので、メジャー・レーベル(?)でのデビ
ュー盤になります。最初のアルバムは別途出品している「IT'S ABOUT TIME (ZEPHYR)」です。その辺の経緯は「IT'S
ABOUT TIME」の説明文を参照してください。
元々EmArcyのMG36125としてリリースされたアルバムですが、これはMERCURYでのオリジナル盤のようですので
誤解のなきよう。大体マーキュリーもエマーシーも同じようなものですが…。要するにEmArcyではモノラル仕様で出した
アルバムが、MERCURYではステレオ仕様も出したということでしょう。
プロデュースはピート・ルゴロにより、主なパーソネルは、ドン・ファーガクィストのトランペット、ミルト・バーンハートのトロン
ボーン、バド・シャンクのフルート、ハワード・ロバーツのギター、レッド・ノーヴォのヴァイブ、レッド・ミッチェルのベース、ド
ラムスにシェリー・マンとラリー・バンカー、その他ストリングス…というように、ウェストの有名どころが揃っています。中々
にお金をかけたアルバムのようです。
収録曲の主なところでは、「Singin' In The Rain」、「Lover Man」、「Lucky Day」、「It Never Entered My Mind」、「I Let A
Song Go Out Of My Heart」、「Love For Sale」、「I'm Glad There Is You」、「After You've Gone」、「I Wanna Be loved」
などがあり、前作よりもジャズ寄りの選曲で、それぞれに個性的な歌唱を聴かせています。
有名な曲をアレンジを効かせた唱法で歌っており、それで楽しませてくれるのと同時に、入念に準備したと思わせるよう
な丁寧で情緒溢れる歌唱も聴きものです。どっちかというと、後者のパターンが私にはヒットしました。で、お薦めはA面の
「Lucky Day」、B面の「I Let A Song Go Out Of My Heart」、「I'm Glad There Is You」などになります。
彼女はあるとき、「あなたが好きな(敬服する)歌手は誰か?」と尋ねられて「I lovvvvvve Rosemary Clooney. I love
her soul. (中略) I've always loved her. Of course, Lena.」と答えています。要するに「ローズマリー・クルーニーが一番
だけど、もちろんリナも」ということで、多分ロージーとはプライベートでも交流があったからで、歌唱がより似通っているの
は「リナ」、すなわち「リナ・ホーン」であるのは明白です。「After You've Gone」などの歌い方は正にその如実な現れに
思います。
ところでアルバム・タイトルの「Olay!」ですが、おそらくはスペインの闘牛場なんぞで耳にする「Ole'!」に掛けています。この
ステレオ版ジャケットの裏面には、胡散臭く背中に槍が刺さった闘牛の絵が描かれていることからも明らかでしょう。
じゃあ、何で? 彼女は、ベニー・カーター楽団に居たときは「Rachel Davis」(安もんのAVスターみたいだな)と名乗って
いたそうですが、苗字が「Olay」になったのは、最初の夫がスペイン人で「Olay」という苗字だったからです。それを含めて
3回ほど結婚を繰り返した恋多き女性だったようですが、「Olay」への思い入れは相当強かったようですな…。
彼女の歌唱は、ブルース・フィーリングに根ざしたと思われるシャウトが粋で、通常のテンポをやや変化させて歌い込む懐
の深さも聴かせてくれます。彼女自身はジャズ・シンガーであることを第一に考えていたようですが、この当時に流行だっ
たフラット・トーンをわざと避けたような妙趣溢れるビブラートも実は聴きものです。
彼女のレコードとしては、おそらくはこの「Olay!」が唯一本邦に紹介されたアルバムだったと記憶します。1990年頃にLP
で日本盤がリリースされましたが、残念ながらジャケット写真の鮮明度は落ちていました。日本盤の写真では、彼女の着
ている長袖ニット風ワンピースは単なる無地のスムーズなものですが、実はこのワンピース、襟とブローチの下側(襟から
真下にベルトのバックル付近まで)には織り柄があるのです。画像では分かりにくいかと思いますが、絵の具を塗ったよう
なトーンに成り下がっている日本盤に比して、オリジナルの本盤では彼女の胸付近の微妙な陰影も認められます。こうな
ると、「やっぱりオリジナル盤ですかね」という論調にも頷首せざるを得ませんか…。
今回は程度の良いステレオ版でのご紹介ですが、確かモノラル仕様もありましたので、見つかったら後日出品する予定
です。 |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)
「イージー・リビング」(EASY LIVING) |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)の「イージー・リビング」(EASY LIVING)です。
MERCURYのオリジナル盤、モノラル仕様になります。
レコード番号はMG20390。 |
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このレコードは1959年にリリースされた、彼女のMERCURYにおける2枚目で、MERCURYでは残念ながらこれが最
後のアルバムのようです。要は、紹介してプッシュしてくれたビル・バートンが急死したのでした。彼女の落胆は普通では
なかったそうですが、さもありなん、彼女とビルはデキていたそうです。
さて、サブ・タイトルに「Singing discovery of the Jack Paar Show」とあります。想像するに、当時深夜のトーク・ショーとし
て有名だった「ジャック・パー・ショー」(決してパーのジャックではありませんので、誤解のなきよう…)と彼女は何らかの
関わりがあったんだろうということで、パーのショーに出演したことをレコードの販促に使った感じがします。ケネディやニク
ソンが出演したことでも、その頃のパー・ショーは相当インパクトのある番組だったと思われます。
パーソネルなど詳しいことは不明ですが、やっぱりピート・ルゴロがアレンジやプロデュースを担当しており、バッキングは
前作(「OLAY!」)よりも大編成のようで劇的度が増しています。すなわち前作よりはジャズから少し離れたイメージかもし
れません。
それでも、彼女の特質はキッチリと把握しており、うるさすぎない洗練のシャウトとでも言うべき歌唱が収められています。
また独特のビブラートを含んだ唱法は、蓋し一聴の価値があります。
ジャケットには、高価そうな毛皮をまとい、黒い手袋の上から指輪やブレスレットを嵌め、これまた上品ながら煌きのイアリ
ングとネックレスを付けて、片手にタバコ、もう片手にシェリーか白ワインか何か知りませんが、グラスを持って、思わせぶ
りに(?)こっちを見ている彼女の写真が写っています。そして、なんと裏ジャケットにはこれら小道具の出自がクレジット
されています。毛皮はLAのHarry Rosoff、ダイアモンドはビバリー・ヒルズのMarvin Himだそうです。どちらも今はどうなっ
てるか知る術もない店でしょうが、ビル・バートンがかなりの入れ込みで揃えたんでしょうね、努力がいかにも健気であり
ます。
しかし、こういうセレブ風ファッションの似合う女性です。こんな方がパーティなどに居られたら、殿方の視線をくぎ付けとい
うアホらしいシチュエーションに最適で、すべってしまうでしょうな。
ZEPHYRのアルバムがそれほどメジャーに成り得なかったので、このアルバムをして彼女のセカンド・アルバムと呼ぶの
が通例のようですが、テレビ番組に現れた後に彼女の才能は喧伝され、この2枚目も全米で話題になったとされていま
す。惜しむらくはビル・バートンの死で、それがなければ、彼女はもっとジャズ・シンガーとしてブレイクしていたかもしれま
せん。
収録曲の主なところは、エリントン&ストレイホーンの「Just A-Sittin' And A-Rockin'」、ベニー・カーターの「Hurry
Hurry」、「Undecided」、「Easy Living」、ボビー・トゥループの「Now You Know」、ゴードン・ジェンキンスの「Blue Prelude」
などで、それぞれバートンの意向を踏まえたルゴロのアレンジで表現された歌唱だと思います。
メジャー(?)にはこのアルバムが絶頂期を収めた最後のものかもしれません。おそらく日本盤などはリリースされたこと
がないと記憶します。今回はモノラル版でのご紹介ですが、別途ステレオ仕様もご用意しておりますので、ご興味があれ
ばご覧ください。
というわけで、今回はルース・オーレイのピーク期における3枚をご紹介しました。これらは結構レアなアルバムで、中々
に所有欲を満たしてくれる逸品だと勝手に解釈しています。
知られざるジャズ・シンガーの一人ということで、それぞれオリジナル盤をご提供いたします。微妙もしくはわざとらしいビ
ブラートとシャウトに、騙されたと思って浸ってみてはいかが? |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)
「イージー・リビング」(EASY LIVING) |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)の「イージー・リビング」(EASY LIVING)です。
MERCURYのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。
レコード番号はSR60069。 |
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このレコードは1959年にリリースされた、彼女のMERCURYにおける2枚目で、MERCURYでは残念ながらこれが最
後のアルバムのようです。要は、紹介してプッシュしてくれたビル・バートンが急死したのでした。彼女の落胆は普通では
なかったそうですが、さもありなん、彼女とビルはデキていたそうです。
さて、サブ・タイトルに「Singing discovery of the Jack Paar Show」とあります。想像するに、当時深夜のトーク・ショーとし
て有名だった「ジャック・パー・ショー」(決してパーのジャックではありませんので、誤解のなきよう…)と彼女は何らかの
関わりがあったんだろうということで、パーのショーに出演したことをレコードの販促に使った感じがします。ケネディやニク
ソンが出演したことでも、その頃のパー・ショーは相当インパクトのある番組だったと思われます。
パーソネルなど詳しいことは不明ですが、やっぱりピート・ルゴロがアレンジやプロデュースを担当しており、バッキングは
前作(「OLAY!」)よりも大編成のようで劇的度が増しています。すなわち前作よりはジャズから少し離れたイメージかもし
れません。
それでも、彼女の特質はキッチリと把握しており、うるさすぎない洗練のシャウトとでも言うべき歌唱が収められています。
また独特のビブラートを含んだ唱法は、蓋し一聴の価値があります。
ジャケットには、高価そうな毛皮をまとい、黒い手袋の上から指輪やブレスレットを嵌め、これまた上品ながら煌きのイアリ
ングとネックレスを付けて、片手にタバコ、もう片手にシェリーか白ワインか何か知りませんが、グラスを持って、思わせぶ
りに(?)こっちを見ている彼女の写真が写っています。そして、なんと裏ジャケットにはこれら小道具の出自がクレジット
されています。毛皮はLAのHarry Rosoff、ダイアモンドはビバリー・ヒルズのMarvin Himだそうです。どちらも今はどうなっ
てるか知る術もない店でしょうが、ビル・バートンがかなりの入れ込みで揃えたんでしょうね、努力がいかにも健気であり
ます。
しかし、こういうセレブ風ファッションの似合う女性です。こんな方がパーティなどに居られたら、殿方の視線をくぎ付けとい
うアホらしいシチュエーションに最適で、すべってしまうでしょうな。
ZEPHYRのアルバムがそれほどメジャーに成り得なかったので、このアルバムをして彼女のセカンド・アルバムと呼ぶの
が通例のようですが、テレビ番組に現れた後に彼女の才能は喧伝され、この2枚目も全米で話題になったとされていま
す。惜しむらくはビル・バートンの死で、それがなければ、彼女はもっとジャズ・シンガーとしてブレイクしていたかもしれま
せん。
収録曲の主なところは、エリントン&ストレイホーンの「Just A-Sittin' And A-Rockin'」、ベニー・カーターの「Hurry
Hurry」、「Undecided」、「Easy Living」、ボビー・トゥループの「Now You Know」、ゴードン・ジェンキンスの「Blue Prelude」
などで、それぞれバートンの意向を踏まえたルゴロのアレンジで表現された歌唱だと思います。
メジャー(?)にはこのアルバムが絶頂期を収めた最後のものかもしれません。おそらく日本盤などはリリースされたこと
がないと記憶します。今回はステレオ版でのご紹介です。
知られざるジャズ・シンガーの一人ということで、オリジナル盤をご提供いたします。微妙もしくはわざとらしいビブラートと
シャウトに、騙されたと思って浸ってみてはいかが? |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)
「イッツ・アバウト・タイム」(IT'S ABOUT TIME) |
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ルース・オーレイ(RUTH OLAY)の「イッツ・アバウト・タイム」(IT'S ABOUT
TIME)です。
ZEPHYRのオリジナル盤、モノラル録音になります。
レコード番号はZP12004。 |
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このレコードは1956年後半頃に録音されたもので、おそらくは彼女名義のファースト・アルバムです。タイトルが「IT'S
ABOUT TIME」というだけあって、タイトル曲と同様に、曲名に「タイム」という語句を含む曲が12曲収録されています。こ
のアルバムの後が、結構有名なMERCURY/EMERCYの「OLAY!」になります。
収録曲の主なところでは、「Coffee Time」、「Supper Time」、「Better Luck Next Time」、「Bidin' My Time」、
「Everytime We Say Goodbye」、「As Time Goes By」、「It's About Time」などがあり、それぞれに中々特長を活かした
歌唱になっています。
ビル・ヒッチコックによるアレンジと指揮で、バックバンドは不明ですが彼女の歌唱を引き立たせるためか抑え目のバッキ
ングのようです。いわゆるクラブで歌っているような雰囲気を大事にしたのでしょう。
彼女は1951年にベニー・カーター楽団に入り、いくつかのバンドを経てキャリアを磨きますが、この時点でブレイクしたわ
けではなく、結局はLA、ハリウッドやサンフランシスコのジャズ・クラブなどで歌っていたようです。
1956年、彼女は「キャバレー・コンサート・シアター」でウェイトレス兼シンガーとして働いていました。2、3曲歌っては、
またウェイトレスに戻るという、中々にハードな労働でした。ある晩、一人の男性が彼女に近寄ってきて言いました。「レコ
ードを作りたくないか?」、彼女は「もちろん!」と答えました。彼がビル・ヒッチコックだったのです。という映画の1シーン
の如き出会いの後、ビルのアレンジで仕事をし、数ヵ月後に出来上がったのが、このアルバムなのです。
ところが、ビルと彼女の関係がどうだったかは知る術もありませんが、この後彼女はアビー・リンカーンの代わりに、あるク
ラブに雇ってもらったといいますから、また暫くはクラブ・シンガーで生計を立てていたようです。
このアルバムに興味を持ったビル・バートンが彼女に接近するのが1957年です。またしてもビルで、どうもビルに弱いル
ースのようで、なんだかよく分かりません…。ビル・バートンがマーキュリーへ彼女を売り込んでリリースしたのが前述した
「OLAY!」なのでした。
彼女の歌唱は、ブルース・フィーリングに根ざしたと思われるシャウトが粋で、通常のテンポをやや変化させて歌い込む懐
の深さも聴かせてくれます。彼女自身はジャズ・シンガーであることを第一に考えていたようですが、この当時に流行だっ
たフラット・トーンをわざと避けたような微妙なビブラートも実は聴きものです。
彼女はその容姿も含めて、いずれ何らかの形でデビューしただろうとは思いますが、一応世に出る契機になった二人の
ビルに、この際拍手でもしときまひょか。後日談ですが、二人目のビルとはどうもデキてたようでっせ…。まあ、よーある話
しとゆーことで。 |
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ルイ・アームストロング(LOUIS ARMSTRONG)
「プレイズ・W.C.ハンディ」(PLAYS W. C. HANDY) |
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ルイ・アームストロング(LOUIS ARMSTRONG)の「プレイズ・W.C.ハンディ」
(PLAYS W. C. HANDY)です。
COLUMBIAのオリジナル盤、モノラル仕様になります。
レコード番号はCL591。 |
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このレコードは、1954年に録音されたもので、一説によるとサッチモ最後の傑作と言われています。この後も彼は幾多
のレコードをリリースしましたが、熱血ジャズ・ファンにとってはこれが最後というわけです。私はミーハーなもんで「ハロ
ー・ドーリー」や「ディズニー・ソングス」なんかも好きなのですが、生粋で申せばそんなのはジャズじゃねえってところなん
でしょう。納得。
パーソネルは、トランペットにルイ・アームストロング、トロンボーンにトラミー・ヤング、クラリネットにバーニー・ビガード、ピ
アノにビリー・カイル、ベースにアーベル・ショウ、ドラムスにバレット・ディームス、そしてボーカルにルイ・アームストロング
とヴェルマ・ミドルトンというメンバーです。
収録曲は、A面に「St. Louis Blues」、「Yellow Dog Blues」、「Loveless Love」、「Aunt Hagar's Blues」、「Long Gone」の
5曲、B面に「Memphis Blues」、「Beale Street Blues」、「Ole Miss」、「Chantez-Les Bas」、「Hesitating Blues」、
「Atlanta Blues」の6曲、計11曲です。
ルイ・アームストロングは1930年代以降、オーケストラによる演奏が多かったのですが、彼の本質はコンボにありという
ことで、ルイ・アームストロング・オールスターズを1947年に結成します。ここらへんにはレナード・フェザーの貢献が認め
られますね。
でもって、DECCAの専属として華々しい活躍を為すんですが、1953年にはほぼ同じメンバーで初来日を果たしていま
す。というような活躍を横目で見ていたジョージ・アヴァキャンが、オールスターズを丸ごと借り受けて録音したのが、この
アルバムです。録音場所は何故かシカゴでした。
サッチモにとっても、一人の作品だけでアルバムを作るのは初めてだったはずで、しかも題材が「ブルースの父」と呼ばれ
る「W.C.ハンディ」ですから、かなりの緊張感を持って臨んだだろうと想像されます。聞くところによれば、このアルバム
のデモテープを聴いた、当時81歳のW.C.ハンディが感激のあまり涙を流して喜んだと言われています。W.C.ハンデ
ィはブルースにブルーノートが存在することを見つけて、ブルースの定形を形作ったとして有名ですね。
さて、A面の1曲目はご存知の「St. Louis Blues」です。ハンディの代表的な曲のみならず、アメリカを代表するがごとき名
曲でしょう。このアルバムでも最も長尺な演奏で9分近く要しています。ここでのプレイは控えめに見ても20年代のサッチ
モに負けない名演です。音質も含めれば、これこそ最高のパフォーマンスと言って過言ではありません。イェーイ、サッチ
モ、ブラボー!ってところで、ホンマに大したもんです。トラミー・ヤングの荒っぽいのが玉に瑕ですかね。
2曲目は「Yellow Dog Blues」で、「黄色い犬のブルース」と訳せますが、実際は違う意味のようです。黄色い犬ってフツー
はいませんよね。ルイのボーカルが一際鮮やかです。
3曲目が「Loveless Love」。「愛なき愛」みたいなもんですが、原曲は「Careless Love」という民謡だったらしく、それに別
の歌詞と曲を加えて出来上がったものだそうです。「不注意な愛」が「愛なき愛」になるんですから、何だか考えさせられ
ます。「不注意」ならボンヤリ者の出来心か魔がさしたみたいなもんですが、「愛なき」になると何だか援交か淫行みたい
でコワイものがありますね。でも、演奏はトラミーが荒れ気味ながらも全体としては感じさせてくれる名演で、ストレートに
プレイしているサッチモが文句なしにイカシてます。
4曲目が「Aunt Hagar's Blues」。「ヘイガー叔母のブルース」てなもんで、何でもブルースにするオッサンでした。塀が叔
母じゃないですから誤解のなきように。テンポがゆっくりめで、いわゆるブルース・フィーリングを描いています。ブルースっ
てこういうものなの?
5曲目は「Long Gone」で、「長いこと不在」的な意味でしょうね。ちょっとした間違いから罪に問われて長いこと牢屋に入っ
ていた兄ちゃんが、意を決して脱獄したみたいな風情のはずですが、皆で歌っているこの曲は「皆で歌えば、この世はハ
ッピー」って感じで笑えます。
長くなりますので、B面のご紹介は省きますが、一つ付け加えておけば、2曲目の「Beale Street Blues」が凄いです。1
910年代の作曲によるこの曲を、最高の歌と演奏で盛り上げています。サッチモ最高の名唱の一つでしょうか。
このアルバムで唯一不満があるとすれば、トラミー・ヤングの出来です。全体に荒れていて平板で、進行を間違うところも
あって、それはそれなりに面白いんですが、ドラッグまみれだったんじゃないのと思える節もありますから、褒められたも
んじゃありません。本質的にはいいプレイヤーなんですがね。
それを救っているのが、サッチモのリーダーシップとバーニー・ビガードの変態クラリネットです。品がありそうでヘナチョコ
風でもあり、たまには豪快で、変幻自在という変態クラですね。彼を追いかけてるだけでも結構楽しめます。
多少ヤレがありますが、オリジナル盤の再生を楽しむにはお得かもしれません。 |
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