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トニー・ウィリアムズ(TONY WILLIAMS)、ニュー・ライフタイム(NEW
LIFETIME)
「ビリーブ・イット」(BELIEVE IT) |
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トニー・ウィリアムズ(TONY WILLIAMS)、ニュー・ライフタイム(NEW
LIFETIME)の「ビリーブ・イット」(BELIEVE IT)です。
COLUMBIAのオリジナル盤になります。
レコード番号はPC33836。 |
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パーソネルは、ドラムスにトニー・ウィリアムズ、ギターにアラン・ホールズワース、キーボードにアラン・パスクァ、ベースに
トニー・ニュートンというメンバーで、この構成からはバリバリのロックアルバムが想像できます。
このアルバムは、1975年にリリースされたもので、ニューライフタイムとしての1枚目、旧ライフタイムからは6枚目になり
ます。
既にマイルスグループで名声を博していたとは言え、この当時は30歳で、ジャケット裏面には失礼ながら未だ少年の雰
囲気を残したトニーの写真が写っています。
時代はフュージョンに突入しており、大体メジャーなところではハンコック・グループやウェザー・リポートを始めとして、そ
んな方向へ傾いていた頃で、トニー・ウィリアムズやCOLUMBIAにしても例外ではなく、フュージョン路線まっしぐらでし
た。
そんな時期にリリースされた1枚ですが、今聴き返してみると中々にアグレッシブなプレイで、凡百の軟弱フュージョンと
は一線を画すものかと思います。
しかし聴きようによっては全くのロック・アルバムと言えなくはなく、収録曲のうち3曲がアラン・ホールズワースの作曲に
よることからも、この傾向がお好きな御仁には堪らないアルバムかもしれません。
チック・コリア・RTFが最もロックに近づいた時期と大体同じような時期のアルバムで、似たような傾向を現しているのが
興味深いと感じるのは私だけでしょうか…。
やや重めのうねったようなリズムに乗って、ギターとドラムスが快調なプレイを披露しています。軟弱フュージョンとの違い
はこの辺にありそうです。 |
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ドナルド・バード(DONALD BYRD)
「テイキン・ケア・オブ・ビジネス」(TAKIN' CARE OF BUSINESS) |
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ドナルド・バード(DONALD BYRD)の「テイキン・ケア・オブ・ビジネス」(TAKIN'
CARE OF BUSINESS)です。
TCBのオリジナル盤になります。
レコード番号はTCB−1002。 |
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パーソネルは、トランペットにドナルド・バード、バリトン・サックスにペッパー・アダムス、ピアノにハービー・ハンコック、ベ
ースにレイモン・ジャクソン、ドラムスにジミー・コブというメンバーです。A面2曲目の1曲だけヴァイブでテディ・チャールズ
が参加しています。
このレコードは1961年に録音されたもので、ドナルド・バードはBLUENOTEに諸作を吹き込んでいた時期に相当しま
す。ハービー・ハンコックはマイルス・グループに参加する前で自己の初リーダーアルバムである「TAKIN' OFF」を発表す
る直前、ジミー・コブはマイルス・グループを脱退する少し前になるかと思います。何だか面白い組み合わせだと思いませ
んか。
このTCB盤でのタイトルは「TAKIN' CARE OF BUSINESS」になっており、別にこんな名前の曲が収録されているわけでも
なく、何故にこんなタイトルになったかは不明です。「仕事に気を付けて」なんて発想が何処から来るんでしょうか? 日本
ではまずお目にかからないアルバムで、ハービー・ハンコックが参加しているだけでTCBが目を付けたようなアルバムな
のかもしれません。
この当時、ドナルド・バードとペッパー・アダムスの双頭コンボのピアニストはデューク・ピアソンとかが普通だったのです
が、モード派へ進みつつあるハービー・ハンコックを座らせたところにこのアルバムの存在価値があるように思えます。ハ
ンコックのプレイはそれなりにモードを意識させており、ハードバップの影を引きずったドナルド・バードが変化しそうな気配
を感じさせ、その後の「ブラック・バード」に通ずる豹変を思わせないではありません。
全体的にはハードバップに新主流派の香辛料をふりかけたような演奏で、楽しめます。どことなくマイルスやケニー・ドー
ハムの雰囲気も感じられて、時代を髣髴とさせる演奏です。
ベースのレイモン・ジャクソンはそんなに有名な人ではありませんが、当時の売れっ子だった要素は感じられ、ステディな
プレイに好感が持てます。テディ・チャールズのいっちょ噛みも、結果としてOKだったようで、変なイメージは湧きません。
収録曲はA面に「Curro's」、「Day Dream」、「Bird House」の3曲、B面に「Out of This World」、「Mr. Lucky Theme」、
「Beautiful Evening」の3曲、計6曲です。
特に聴きものがこれ、というものはなく、それぞれにハンコック・テイストを散りばめた好演かなあ、と思いました。
WARWICKにしろTCBにしろ、何れも日本ではとんとお目にかからないレーベルです。ある種、幻の名盤化しているア
ルバムなのかもしれません。 |
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ドナルド・バード(DONALD BYRD)
「ブラック・バード」(BLACK BYRD) |
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ドナルド・バード(DONALD BYRD)の「ブラック・バード」(BLACK BYRD)です。
BLUENOTEのオリジナル盤かなと思われます。ステレオ仕様になります。こ
の辺りのオリジナルと再発の区別がよく分かりませんので、もしかしたらオリ
ジナルではないかもしれません。レーベル画像でご判断ください。
レコード番号は、BN−LA047F。 |
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パーソネルは、トランペットやフリューゲル・ホーンにドナルド・バード、同じくトランペットにフォンス・ミゼル、フルートとサッ
クスにロジャー・グレン、キーボードにジョー・サンプル、エレピとシンセにフレッド・パーレン、ギターにディーン・パークス、
ベースにウィルトン・フェルダー、ドラムスにハーヴィー・メイソン、パーカッションにボビー・ポーター・ホール、アレンジにラ
リー・ミゼルとなっています。1曲だけ、ギターにデヴィッド・T・ウォーカー、ベースにチャック・レイニーなんぞが交替してい
ます。
このレコードは、1972年の4月にLAハリウッドで録音されたもので、ジャケット裏面にはスカイ・ハイ・プロダクションのラ
リー・ミゼルによるアレンジとプロデュースと記載されています。「スカイ・ハイ」といっても千の顔を持つ男、ミル・マスカラ
スのテーマ・ソングではなくて、ミゼル兄弟の作ったプロデュース・チームの名称だそうで。この頃ミゼル兄弟はいろんなと
ころに出没してジャズ・ファンクやポップスのヒット作を作っていたそうです。
ということは、ドナルド・バード名義のアルバムではありますが、まるっぽミゼル・グループの作品と呼べなくもないわけ
で、ミゼルの揃えたメンバーにバードがおじゃましました的な解釈が当たらずとも遠からずではないでしょうか?
聞くところによると、これこそブルーノート最大のヒット作だったそうで、70年代初頭においては然もありなん。ウェザー・リ
ポートやRTFなんぞも出現して流行っていましたから、機を見るに敏なメジャー・レーベル、ユナイテッド・アーティスト傘下
のブルーノートならではの快挙でござんした。
さて収録曲は、A面に「Flight Time」、「Black Byrd」、「Love's So Far Away」の3曲、B面に「Mr. Thomas」、「Sky High」、
「Slop Jar Blues」、「Where Are We Going?」の4曲、計7曲です。
これら収録曲の作曲はすべてラリー・ミゼルでして、やっぱりバードはリーダーもしくはソロイストとして迎えられつつも、
「ご免やっしゃ」的な参加だったように思えるのですが、事実はどうなんでしょうね。
まずA面の1曲目ですが、のっけからジェット機の離陸だか着陸だかの音が右CHから左CHへと動いていきます。「皆さ
ん、これがステレオです」とでも言いたげな、よくあるステレオ啓蒙用テストレコード風アプローチですな。古臭いアレンジ
でウケを狙ったんでしょうか? これも裏面をよく見れば「707 jet plane effect courtesy of Electra Records」とあります
から、ボーイング707の実際の音を借りてきてかぶせたわけです。お金が掛かってますね?
ボーイング707といえば、今でこそボーイングは旅客機業界の最大手ですが、707が就航した当時(1950年代半ば)
では、英国コメット社やダグラスやロッキードが凌ぎを削っていた頃で、ボーイングは2番手以下の存在でしたね。747ジ
ャンボ・ジェットが出るまでは、この707や727で糊口をしのいでいたわけで、ジャンボ以降のボーイング躍進も既に懐か
しい時代になりました。ところで、太平洋戦争当時に日本を爆撃したことで有名な「B29」もボーイング社製造だって知っ
てました?
閑話休題。ラリー・ミゼルはその他のブルーノートのアルバムでは、ボビー・ハンフリーなんぞを手掛けていましたから、う
ーむ悪く言えば「ワンパターン」の謗りを受けないではない存在なんでしょうが、よく言えば時代を反映した水準的作品を
リリースしたとも言えなくはない微妙な存在でした。
この頃からブラック・ファンクなどという呼称が生まれて、ジャズかポップスかソウルか何だか分からないブラック・ミュージ
ックが台頭してくるわけで、ミゼル兄弟はモータウンとも親しかったといいますから、正にクロスオーバー(とっくに死語で
すな…)、フュージョンの先駆的(?)役割を果たしたと、一応褒めておきましょうか。
で、演奏なんですが、今の耳で聴くとBGMと間違えそうな雰囲気も保持していますが、リリース当時はいわゆる「ナウい
ヤングが好むプレイ」と紋切り型に批評しておいて間違いのない「イカシタ」演奏だったと記憶します。何せ私は丁度この
頃ジャズに目覚めたのでありました。
今になって、クラブ・シーンなんぞで有難がっている素養は既に擁していたわけで、「あの、ドナルド・バードが…」という落
胆の声も聞こえないではないでしたね。「FUEGO」と同一人物とは思えないという批判の声もよく耳にしました。
とは言え、ドナルド・バード自身は、思えば結構学究肌な素養もお持ちでしたから、いつの時代も中々斜に構えた姿勢で
音楽に取り組んでおられたのかなと思わずにはいられません。ちょいとクールな面を残しつつ、時代に迎合するんじゃなく
て、それでも流行りは理解しているよ、みたいな強かで商売上手な感性を持っていたのではないでしょうか…。
以前からボーカルやコーラスを入れたアルバムを作っていたバードですが、ここでは数人のメンバーと数曲に渡って歌っ
ています。むくつけきおっさんたちのボーカルということで、ちょいと滑り気味かもしれませんが笑いも誘う熱演と理解を示
しましょう。
長くなってきましたので曲目紹介は省きますが、このアルバムでのサウンドはソウルやファンクやフュージョンのフレーバ
ーが横溢していて、もはや純ジャズとは言い難いものの、聴いてて快適であることには間違いありません。快適ほど飽き
やすいという傾向はよくあることですが、今でも大好きな方が結構いらっしゃるので、蓋し名盤なんでしょう。
ミゼルのアレンジは相変わらずの思いっ切りグルーヴィーで、下手するとハンコで押したプレイに陥りがちな予感も感じさ
せますが、実際は何とか徳俵に足を残したスレスレ・ミュージックに収まっています。メンバーとの相性もよかったんでしょ
うね。中でも異彩を放ちつつ特筆すべきは、ロジャー・グレンのフルートかと思います。ハービー・マンほど纏わりつかず、
聴きようによってはスカスカ・フルートにも聴こえるんですが、今回のアレンジにはこれがバッチリ嵌ってました。
他にも、ジョー・サンプルやウィルトン・フェルダー、ハーヴィー・メイソンとか後の有名人がバックを固めていますし、デヴィ
ッド・T・ウォーカーの参加も興味深いところです。中にはバードがマイルスっぽい演奏を披露している曲もあって、いずれ
にせよ一聴の価値は十分にあります。
最後に、ジャケットを飾る古臭い写真のことなんですが、何でこんな写真を引っ張り出してきて採用したのか少々理解に
苦しむところです。右下に写真のクレジットがあり、どうやら1897年にテネシーのノックスヴィルで撮影されたような感じ
で、19世紀の代物を使う意義は何だったんでしょう? 加えて、後ろの戸口上部には「WELCUM」という言葉があり、今
でこそ「COME」を「CUM」と表記するケースをそこいら辺で見掛けますが、この時代はまさかジョークでもないでしょうし、
複数の意味で程度の低さを感じさせますな。
さらに、写っている人々の内、特に向かって左側で演奏している人々の服装がボロボロで、靴の底など抜けてます。もう
貧しいのを絵に画いたような光景で痛々しくもあります。真ん中から右寄りにかけて向かい合って手を取っている男女で
すが、どうも後ろにもう一組の男女がいるようにも見えます。男の方は後ろに足が1本見えますから多分誰か立っている
んでしょうが、女の方は単純に太ったオバハンなのか後ろの一人と微妙に重なっているのか判然としません。何やら心霊
写真みたいにも見えます。右端には二組の男女が写ってまして、男が女をナンパしている風にも受け取れます。統一教
会じゃないでしょうが、合同結婚式か何かなのでしょうか? 謎は深まるばかりです。
まあ、ジャケットの不思議さを差し引いても楽しめるアルバムですので、この機会にオリジナルらしい一品はいかがでしょ
うか? 巷では一応ブラック・ミュージックの名盤とされていますね。 |
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ドン・エリス(DON ELLIS)
「エレクトリック・バス」(ELECTRIC BATH) |
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ドン・エリス(DON ELLIS)の「エレクトリック・バス」(ELECTRIC BATH)です。
COLUMBIAのオリジナル盤ですが、ラジオ・ステーション・サービス用の非売
品になります。とは言うものの、ほとんど使われた形跡がありませんので、盤
質やジャケットの程度は非常に良好な状態を保っています。
レコード番号はCS-9585です。 |
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このレコードは1967年に録音されたもので、ドン・エリス以下20名ほどのプレイヤー、ドン・エリス・オーケストラによる演
奏です。
実験的なジャズを推進していたとされるドン・エリスですが、難解なところはなく、変拍子を用いていても強烈にスイングす
る演奏を聴かせてくれます。
もっと聴かれてよい、正に過小評価の最たるものだと思います。ジャケット裏面にはヘンリー・マンシーニの言葉も紹介さ
れており、そこには「ロック世代である自分の息子クリスと共にドン・エリス・ニュー・バンドに感動させられた…」とありま
す。
ここ10年以上も再発されることなく、今後も入手困難と思われる見事なアルバムをLPでいかがでしょうか? |
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ドン・バイアス(DON BYAS)、バド・パウエル(BUD POWELL)
「キャノンボールに捧ぐ」(A TRIBUTE TO CANNONBALL) |
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ドン・バイアス(DON BYAS)、バド・パウエル(BUD POWELL)の「キャノンボー
ルに捧ぐ」(A TRIBUTE TO CANNONBALL)です。
COLUMBIA原盤のリイシュー盤かと思われます。時期的にはオリジナルか
もしれませんが、よく分かりません。レコード番号はJC−35755。 |
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パーソネルは、テナーサックスにドン・バイアス、ピアノにバド・パウエル、トランペットにイドリース・シュリーマン、ベースに
ピエール・ミシュロ、ドラムスにケニー・クラークというメンバーです。
このレコードは、1961年にパリで録音されたもので、パウエルの最晩年の録音としても貴重なものです。
ケニー・クラークを始めとして、パウエル、バイアスとも60年代にはヨーロッパに住んでおり、そういう彼等が集まってバッ
プ・スタイルを踏襲した演奏を繰り広げたのが、このアルバムと言えます。
パウエルは中々に好調なプレイを聞かせますし、バイアスのプレイには熱気が感じられます。クラークのドラムスは毎度
の通りですが、案外にベースが聴きものかもしれません。
構文が異なったとしても、互いを補って強烈なスィング感を生み出している好例でしょう。
この後、パウエルは1964年に亡くなり、バイアスも不遇の末に1972年に亡くなります。
彼らの偉大な記録をLPでいかがでしょうか? |
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