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チコ・ハミルトン(CHICO HAMILTON)
「ザ・ベスト・オブ・チコ・ハミルトン」(THE BEST OF CHICO
HAMILTON) |
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チコ・ハミルトン(CHICO HAMILTON)の「ザ・ベスト・オブ・チコ・ハミルトン」
(THE BEST OF CHICO HAMILTON)です。
IMPULSEのオリジナル盤になります。
レコード番号は、AS−9174。 |
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パーソネルは、パーカッション・ドラムスにチコ・ハミルトン、アルト・サックスにチャーリー・マリアーノやアーニー・ローレン
ス、フルートとテナー・サックスにチャールズ・ロイド、テナー・サックスにジェローム・リチャードソンやジミー・ウッズ、ギタ
ーにガボール・ザボやラリー・コリエル、ベースにロン・カーターやリチャード・デイヴィスやアルバート・スティンソン、その他
パーカッションにウィリー・ボボやヴィクター・パントーヤなどとなっています。
要はベスト盤なので、幾つかのグループによる演奏の寄せ集めなのです。そう言ってしまうと身も蓋もありませんが、19
60年代中盤におけるチコ・ハミルトンはこれ1枚でOKのような気もします。オリジナルに拘られる方にはお薦めしません
が…。
収録曲は、A面に「Forest Flower-Sunrise」、「Forest Flower-Sunset」、「People」、「Chic Chic Chico」の4曲、B面に
「Conquistadores」、「Who Can i Turn To」、「Evileye」、「Larry Of Arabia」の4曲の、計8曲です。
A面の冒頭は、よく知られたチャールズ・ロイドの「フォレスト・フラワー」に始まり、フュージョンに至る好演が聴こえます。
何だかぎこちないようなテーマも笑かしてくれます。大体ロイドもザボもオトボケが過ぎますな。3曲目の「People」もザボ
のヘッポコ風ギターが印象的で泣かせてくれます。4曲目の「Chic Chic Chico」は全くリラックスした、人を小ばかにした
ような感じで、安心できるトラックです。
B面はと言えば、1曲目がA面の「People」と同一メンバーで、相変わらずのザボによるイカシタ演奏が聴けます。パーカッ
ションを刻みつつ掛け声を入れているのはどなたでしょうか? 少なくとも二人は居ます。ラストの「Larry Of Arabia(アラ
ビアのラリー)」にはタイトル通りギターでラリー・コリエルが参加してまして、ザボとは異なるブルージーな演奏を披露して
くれて、これまた涙ものです。
ところで、この頃のチコのオリジナル・アルバムには我らがナベサダのクレジットも見受けられるのですが、何故かこのベ
スト盤には彼のプレイは含まれておりません。アメリカンの日本蔑視の表れか、非常に妥当な選択かは不明です。
大体ジャケットの写真、チコの血走った目つきと、どアップの暑苦しさで何歩も引けそうな出で立ちですが、内容は殊のほ
か楽しくて万人にお薦めします。案外この辺りがフュージョンへと突入する嚆矢なのかもしれません。 |
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チャーリー・ミンガス(CHARLIE MINGUS)
「直立猿人」(PITHECANTHROPUS ERECTUS) |
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チャーリー・ミンガス(CHARLIE MINGUS)の「直立猿人」
(PITHECANTHROPUS ERECTUS)です。
ATLANTIC原盤で、RHINO RECORDSによるアンダー・ライセンス復刻盤
の新品・未開封です。 |
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パーソネルは、ベースにチャーリー・ミンガス、アルトサックスにジャッキー・マクリーン、テナーサックスにJ.R.モンテロ
ーズ、ピアノにマル・ウォルドロン、ドラムスにウィリー・ジョーンズという2管のクインテット構成です。
このレコードは1956年に録音された、ミンガスの最高傑作との呼び声が高いものです。ミンガスはジャズ・ワークショップ
というグループで、現代音楽の流れをも踏まえた実験的な創作を行っていましたが、この中において、作品に対する表現
方法を徹底的にリハーサルする手法を採っていたと考えられます。
したがって、ミンガス自身の、ある種強烈な個性や熱意をグループ・サウンドとして表出することができたと推測されま
す。こういったミンガス独自の音楽が初めて結実し世に問うたのが、このレコードかと歴史的に解釈されるでしょう。
1950年代半ばから後半と言えば、ハード・バップ全盛期に当たりますが、この時期に単なるハード・バップの形式を凌
駕したグループ・サウンドを実現し得たことは、確かにミンガス・ミュージックの一つの頂点を形成したと言えます。1950
年代最後期には、正に唐突にオーネット・コールマンが出現しますが、今から思えば、アヴァンギャルドの特異性は既に
このミンガスの活動によってもたらされていたようにも思えます。
誰がこのサウンドを聴いて、クインテットで演奏されていると想像するでしょうか。もっと大編成のオーケストラによる演奏
のように聴いてしまいます。勿論譜面があっての成果でしょうが、ミンガスのバンド・リーダーとしての優秀性を意識しない
わけには行きません。
実力や実績の割りには人気の乏しいミンガスですが、異色性も踏まえて、持っていて損はないレコードの1枚です。スタ
ジオ録音において到達しえた一つの頂点であることは、繰り返しますが間違いありません。
ちなみに私はミンガスのライブ盤が結構お気に入りで、タウンホールやモンタレー、あるいは欧州楽旅での演奏に痺れて
います。 |
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チャールズ・アーランド(CHARLES EARLAND)
「フロント・バーナー」(FRONT BURNER) |
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チャールズ・アーランド(CHARLES EARLAND)の「フロント・バーナー」
(FRONT BURNER)です。
MILESTONEのオリジナル盤になります。
レコード番号はM−9165。 |
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パーソネルは、オルガンにチャールズ・アーランド、テナーサックスにビル・イーズレー、トロンボーンにヴァージル・ジョーン
ズ、ギターにボビー・ブルーム、ドラムスにバディ・ウィリアムズ、パーカッションにフランク・コロンというメンバーです。
このアルバムは、1988年に録音されたもので、ファンキー・コテコテ路線を歩んできた彼が、それほど公に出てこなくな
り何やってんだろうと思われていた頃にリリースされています。何となく当時の動向が感じられる1枚ではあります。
アーランドと言えば、元々サックス奏者で、ジミー・マックグリフなど共演している内に自分もオルガンを弾きたくなって転
向したというちょいと変わり者ですが、オルガニストとして独立して吹き込んだ、1969年の「BLACK TALK」が大ヒット
し、PRESTIGEのコテコテ路線に巧く乗っかった一人です。
その後、MUSE〜CBSと渡り歩いた後に少々鳴りをひそめていたもので、この「FRONT BURNER」は、新たにボブ・
ポーターのプロデュースによりカムバックを遂げたアルバムになるわけです。何故かMILESTONEのアルバムながらオ
リン・キープニューズのクレジットはありません。少々趣味が異なったのでしょうか…。
アーランドは惜しくも(?)1999年に亡くなっていますが、結局死ぬまでフレーズがあんまり変わらなかったという特徴を
持っており、これをして揺るぎない意志の力とみるか、ハンコで押したプレイとみるかのご判断はお任せいたします。
いずれにせよ、ファンキー、ノリノリ、コテコテ、フリフリなどの常套句を並べざるを得ない一人とは言うものの、演奏の楽し
さにかけてはやはり第一人者の一人に間違いないのも事実です。
録音担当は、ご存知の「ルディ・ヴァン・ゲルダー」で、イングルウッドのスタジオで録音されています。こういった演奏にヴ
ァン・ゲルダーのシツコメ録音はもってこいのようです。
この後、アーランドはまたしてもMUSEに復帰しますから、MILESTONEでのリリースというのは特異な1枚なのかもし
れません。 |
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チャールズ・ミンガス(CHARLES MINGUS)
「ミンガス・アー・アム」(MINGUS AH UM) |
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チャールズ・ミンガス(CHARLES MINGUS)の「ミンガス・アー・アム」
(MINGUS AH UM)、新品・未開封です。
COLUMBIA原盤のリイシュー盤かと思われますが、レコード番号はオリジナ
ル通りのCS−8171になります。 |
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パーソネルは、ベースにチャールズ・ミンガス、トロンボーンにジミー・ネッパー、ウィリー・デニス、テナーサックスにブッカ
ー・アーヴィン、アルトサックスにジョン・ハンディ、シャフィ・ハディ、ピアノにホレス・パーラン、ドラムスにダニー・リッチモン
ドという陣容です。
このレコードは1959年に録音されたもので、この1年後の「ミンガス・プレゼンツ・ミンガス」に繋がる注目盤だと言えま
す。後年にビッグバンドを率いるまでの、ミンガス・ミュージックのエッセンスが詰まったような演奏ではないでしょうか。
実は、私はジャズを聴き出した頃(30年以上前)に、このレコードに出会いました。最初聴いたときは「何だこりゃ」と思い
ましたが、そこは若気の至り、カセットにダビングして繰り返し聴いているうちに凄く良くなってきました。冒頭の「ベター・
ギット・イット・イン・ユア・ソウル」は、何かの折りには口ずさむほどになっていました。
収録曲は、その他にも「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」や「ブギー・ストップ・シャッフル」などがあり、これを聴けば、大体
ミンガスのレパートリーが分かったような気になります。
また「フェイブルズ・オブ・フォーバス(フォーバス知事の寓話)」の初演になり、1年後に録音されたCANDID盤と比べて
聴くのも一興でしょう。聞くところによると、このときの録音では世の中への影響を考えたコロンビアの配慮で、フォーバス
知事を罵るボーカル部分をカットしたとされています。聴きようによっては気の抜けたビールのような録音になっているかも
しれませんが、それは後付けの理屈であり、初演である意義が色褪せるものではありません。「プップー・プップー・ププ
ププープップー」のテーマは、一度聴けば忘れるはずもないでしょう。
ミンガスが何だか理屈っぽくて陰鬱な表情なので嫌いだという人にも、実はお薦めの1枚です。一部のミンガス嫌いの評
論家による唾棄すべき文章に惑わされずに、先入観なしにお聴きになることを強く推奨します。 |
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チャールズ・ロイド(CHARLES LLOYD)
「モントルー 82」(MONTREUX 82) |
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チャールズ・ロイド(CHARLES LLOYD)の「モントルー 82」(MONTREUX 82)
です。
MUSICIANのオリジナル盤ですが、見本盤ですね。
レコード番号はMUSICIAN9 60220−1。 |
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このレコードは、1982年にスイスのモントルー・ジャズ・フェスティバルで録音されたもので、チャールズ・ロイド久々のア
ルバムでした。これ以前には暫く半引退状態で人前に出てこなかった彼ですが、ミッシェル・ペトルチアーニの出現が彼を
して最前線に復帰する決心を為さしめたと言われています。その直前にはビーチ・ボーイズのツアーに同行したりレコー
ディングをしていたといいますから、悠々自適だったんでしょうかね?
パーソネルは、テナーサックスとフルートにチャールズ・ロイド、ピアノにミッシェル・ペトルチアーニ、ベースにパレ・ダニエ
ルソン、ドラムスにサン・シップ・テウスというクァルテットです。
収録曲は、A面に「The Call (Imke)」、「Wind In The Trees」の2曲、B面に「Very Early」、「Michel」、「Forest Flower」の
3曲、計5曲です。例によって(?)フォレスト・フラワーはサンライズとサンセットがありますから2曲分と言えなくもありま
せん。どっちでもいいことですが…。「Very Early」だけがビル・エヴァンスの作曲で、その他は全てロイドのオリジナルに
なります。
さて、A面の1曲目「The Call」です。メンバー紹介のアナウンスに続いて、ロイドが中々ブリブリに吹いてます。「The
Call」ってくらいですから何処かから呼んでるんでしょうか。余計なことを考えなくても、これは好演です。その他のメンバー
は一応最初の曲だからロイドに遠慮してバッキングに徹しているのかと思いきや、半ば過ぎからペトルチアーニがアグレ
ッシブなソロを聴かせてくれます。これが力強くて、失礼ながら身体障害者の演奏とは思えませんね。ロイドが惚れ込む
のも無理はないところです。続いてはダニエルソンのソロですが、録音の妙か、中々に歯切れのよい音を聴かせていま
す。ECM辺りの録音ではもう少し軽かったような気もしますが…。
何故か、モントルーは音のよいのが多いですね。「お城のエヴァンス」も優秀録音で有名ですが、このアルバムもそれに
負けず、ホントに生き生きして聴こえます。
2曲目は「Wind In The Trees」です。「木々の中の風」とも訳せそうで、大人しめの演奏かと思ってしまいますが、さにあら
ず。これまた劇的なプレイでしょう。とにかくロイドが好調で、こんなに鳴った人かいなと思わないでもいられません。また
力強くクリアなピアノが凄いですよ。聴衆の盛り上がり方も尋常ではなくて、ああ聴いてて良かったなという典型がこれで
すね。
B面の1曲目が「Very Early」、ビル・エヴァンスの作曲になる名曲です。「とても早い」という割りにはミディアムなテンポで
進みます。相変わらずロイドが好調で嬉しくなります。
2曲目は「Michel」。誰が見てもミッシェル・ペトルチアーニに捧げた曲だというのが分かります。ここではダニエルソンのソ
ロがイー感じです。
3曲目、すなわち最後の曲がお馴染みの「Forest Flower」です。ここでもペトルチアーニは快調で、何なんだこの存在感
は!と叫びたくもなります。
ご存じない方はいらっしゃらないでしょうが、念のためミッシェル・ペトルチアーニのことを少々ご紹介すると、彼は先天性
の骨障害だそうで、成人しても身長は1mくらいだったといわれています。たまたま腕は普通の人くらいにあったのでピア
ノを弾くことが可能だったようです。その体躯からは信じられないような音楽性豊かな演奏を披露する、正に奇跡の一つで
した。最初に彼の写真を見たときには驚きましたね。どうしてこんな体(失礼!)からあんな演奏が生まれるのかと不思議
に思ったものです。残念ながら生前の彼に会ったことはないのですが、会われた方なら尚更その思いを強くされたのでは
ないでしょうか。
この後10年ほどで、やっぱりと言うか何と言うか、ペトルチアーニは亡くなってしまいます。合掌。
裏ジャケットにはメンバーの写真が載っています。よー分からん矢印がそれぞれのメンバーの頭上に配してありますが、
わざわざこんなことしなくても普通は分かるんじゃないの。ただ、メンバーそれぞれの視線がてんでバラバラで笑います
ね。ロイドとダニエルソンは視線の向こう側にミニスカートの可愛い女の子でもいたのか、少々あっけに取られたような表
情であさっての方向を見つめいています。ダニエルソンなんか半分口が開いてますよ。メンバーの両側に何故か女性が
座っており、要は女性に挟まれて4人が座っているんですが、サン・シップの視線は何と向かって右側の女性に寄せられ
ています。オマケに何か喋っているようにも受け取れますね。「コンサートが終わったら何処かへしけこもうぜ」、「いいわ
よ」などとほざいてるんでしょうか。ウーム、うらやましい。で、肝腎のペトルチアーニは一人我れ関せず何かに読む耽って
いるようにも見えて、じつは手拭いを見つめているというアホみたいなショットでした。それに何故かペトルチアーニだけ、
鼻緒のついた草履を履いてますね。ますます不可解なショットです。
と長々と綴りましたが、蓋しこれは名盤かと思います。何といっても、どういうわけか音が良い。このくらい良ければ、演奏
の重厚さに花を添えてます。騙されたと思って所有されても騙されませんね。 |
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