のとnoノート - JAZZ(ジャズ)レコード評 -
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はじめに
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ザ・スリー・サウンズ(THE THREE SOUNDS)
「アウト・オブ・ディス・ワールド」(OUT OF THIS WORLD)
ザ・スリー・サウンズ(THE THREE SOUNDS)の「アウト・オブ・ディス・ワール
ド」(OUT OF THIS WORLD)です。
BLUENOTEのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。
レコード番号はST−84197。
パーソネルは、ピアノにジーン・ハリス、ベースにアンドリュー・シンプキンス、ドラムスにビル・ドウディーという、ご存知
「ザ・スリー・サウンズ」です。

このレコードは1962年に録音された、スリー・サウンズとしてはデビュー以来4年間在籍したブルーノートでの、一旦は
最後のリリースになるものです。「一旦は」と言いましたのは、この後1966年にブルーノートに戻ってくるからです。しか
し復帰後のスリー・サウンズは、メンバーの交代や時流に乗りたいがためか些か以上にコマーシャルなグループになって
しまいます。オリジナル・スリー・サウンズとしては、このレコードが最後のものかもしれません。

スリー・サウンズの場合、一応ジーン・ハリスがリーダーだとは思いますが、バンド名から推して「3人は対等だよ」という
スタンスを取っていたようで、大体彼らのアルバムは仲良し3人組が写っていました。このアルバムはどういうわけか、当
時のハデハデギャルに花をあしらうというイメージチェンジを施しています。まあ、暑苦しいオッサンが3人並ぶよりはずっ
と好ましいのですが、これはこれでスベッてるようでもあり、リード・マイルスも笑かしますね。

で、このアルバムはどういうものなのかというと、本来なら移籍前のブルーノート最終作になるはずだった「ブラック・オー
キッド」というアルバム(4155)があるんですが、その1962年3月のセッションで録音しすぎた結果、「ブラック・オーキッ
ド」だけで収録できない曲がたくさん残ってしまったのでした。そのとき外れてしまった曲と、未発表だったその1ヶ月前の
セッションからの曲を寄せ集めてりリースされたのがこの「アウト・オブ・ディス・ワールド」ってことです。

単なる残り曲の寄せ集めかと知ってしまうと、何だかあまり期待できそうにないヤッツケ・アルバムかいなと思いますね。
しかし大体が好調のレベルを維持し続けた稀なグループですから、結構このアルバムも人気盤だということですよ。

収録曲は、A面に「Girl Of My Dreams」、「Out Of The Past」、「Just In Time」、「I'll Be Around」の4曲、B面に「My
Silent Love」、「Sanctified Sue」、「Out Of This World」、「You Make Me Feel So Young」の4曲、計8曲です

まずA面の1曲目は「Girl Of My Dreams」です。「(私の)夢の少女」ってなもんで、サニー・クラップという人の作曲です。
サニー・クラップさんはよく知りませんが、1930年頃に活躍していたようで、「Texas & Tennessee Territory Bands
1928-31」というアルバムで彼の名前を見つけました。そういう人のようです。夢の中に少女が出てくれば何だか萌えま
すか? 今も昔も少女ってのはそそるようですね。で、演奏ですが、スリー・サウンズってこれだよね!とでも言いたくなる
ソレです。ベタベタのブロックコードにケーハクと紙一重のノリ、これが受けるんですよ。シャカシャカとタンバリンらしきもの
が喧しいのですが、皆さん盛り上がっているようですので、野暮はいいっこなし。本来はゆったりとした曲だったそうです
が、流石はスリー・サウンズでした

2曲目は、ベニー・ゴルソンの「Out Of The Past」です。「過去から」って、過去に何か不穏なことでもあったんでしょう
か? まあ誰しも恥ずかしい過去を一つや二つや無数に持っていますから、そんな思いで書いた曲なんでしょうね。演奏
は秀逸の一言です。珍しく控えめにしっとりと迫ります。ジーン・ハリスはお得意の音の洪水ではなく、ブロックも控えめに
大人しめに演奏しています。やればできるんじゃないの。時折り辛抱できなくなってブロックが登場しますが、コテコテで
はなくてイー感じです。本作の名演の一つです。

続く3曲目が「Just in Time」。こういう軽快なのはスリー・サウンズの十八番なんですが、日本人にとっては「ケーハク」と
思っちゃう部分もあります。日本のネギトロ巻きをアメリカに持っていったらカリフォルニア・ロールになっちゃったみたいな
ノリですね。でもアボガドのカリフォルニア・ロールも結構イケてたりして、食わず嫌いはいけません。ところで、「Just in
Time」ってトヨタの造語じゃなかったんですね…。

4曲目は「I'll Be Around」です。直訳すれば「私が周りにいますよ」ですが、おそらく「僕がそばにいるよ」ってな感じなの
でしょうね。周りに僕が一杯いたらちょっとキモイですからね。ジーン・ハリスがレッド・ガーランドのように聴こえなくもない
バラード・ナンバーです。ただし終始コロコロではなくて、随所にちょいとソウルフルになるのがハリスの特徴です。

さてB面に移って、1曲目は「My Silent Love」です。無言の愛か、静かな愛か、どちらにしても喧しくなってはタイトルに反
します。演奏もそのとおりで、一応おしとやかに進むんですが、随所にテレテレ・シングルトーンを挟むのがご愛嬌です。
CDだったら、この曲は4曲目の続きで5曲目になるんですが、これは続けて聴いてはいけませんね。何のためにLPのB
面トップに来ているのか、LPでないとその配慮は分かりません。

2曲目は「Sanctified Sue」で、これはジーン・ハリスのオリジナルです。難しい単語ですが直訳すれば「神聖化されたス
ー」になりますか。「スー」っていうのは人の名前でしょうが、やっぱりキャンディーズの「スーちゃん」ですね。いつの間に
か神聖化されたスーちゃんは「普通の女の子に戻りたい!」と叫び、後楽園でファイナル・カーニバルを敢行したのが昨日
のことのように思い出されます。1978年でしたから、もう30年も前の出来事です。残念ながら中々普通の女の子には
戻れなかったようですが…。ナニを隠そう、未だにこの3枚組みLPは大事に持っています。さて演奏ですが、流石は教会
合唱団のウタバン出身(?)のハリスです、ゴスペル調のアプローチが堪りません。ラムゼイ・ルイスのようにも聴こえます
し、ジューク・ボックスにもってこいの演奏ですね。多分これとA面の1曲目なんかをカップリングしてたんじゃないですか
ね、ドウディーのタンバリンらしき音も聴こえますし。

3曲目がアルバムタイトル曲の「Out Of This World」です。訳せば「実に素晴らしい」、「この世のものならぬ」、「この世界
から…」てなことになります。原曲はハロルド・アーレンとジョニー・マーサーの共作になる映画用楽曲のようですので、多
分「実に素晴らしい」が当たりなんでしょう。曲は大変おしとやかな名曲で、流石にアーレン・マーサーです。大人しめなが
らスリー・サウンズの特質が上手く表されており、聴きようによってはマンネリみたいに聴こえるのが、実は微妙なアレン
ジってもんでしょうかね。

最後の曲が「You Make Me Feel So Young」で、「君は私を若い気分にさせてくれる」とは思わせぶりなタイトルです。エ
ロ親父がコギャルを口説く文句なんでしょうか?(援交を奨励しているわけではないので誤解のなきよう) しかし最近SP
AMが多くて困ってるんですが、よく出てくるのが「バイÅグラ」です。私はEDではありませんので、こういうエロ親父に売
ってください、お願いします。で、演奏ですが3人のインタープレイが快調な1曲です。正にヤングな気分が横溢した軽快
なタッチで嬉しくなりますね。一時のケニー・ドリューみたいにも聴こえます。どこまでも明るいスリー・サウンズでした。

スリー・サウンズは、その当時ジューク・ボックスの花形的な存在だったといいます。難解な演奏はほとんどなくて、ダン
ス・リズムを用いた演奏の多いことがアメリカのジューク・ボックスでは大受けだったのでしょう。おかげで日本では「ケー
ハク」の一言で片付けられ、軽んぜられていたわけですね。ビル・ドウディーがともすれば少々喧しくなり、ハリスの音もや
や多めに聴こえますが、マッコイ・タイナーのような雰囲気ではありません。よく聴けば、ハリスのタッチにはケーハクを通
り越した厳粛な響きを感じることもあります。

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ザ・スリー・サウンズ(THE THREE SOUNDS)
「ムーズ」(MOODS)
ザ・スリー・サウンズ(THE THREE SOUNDS)の「ムーズ」(MOODS)です。
BLUENOTEのオリジナル盤、ステレオ仕様のようです。レーベルにはNYCと
ありますので、オリジナルに近い再発のようにも思えます。
レコード番号はBST84044。
パーソネルは、ピアノにジーン・ハリス、ベースにアンドリュー・シンプキンス、ドラムスにビル・ドウディーという、ご存知「ス
リー・サウンズ」です。

このレコードは1960年6月に録音された、スリー・サウンズとしては3枚目のアルバムで(間に1枚、「LD+3」がありま
すので、4枚目とも言えますが…)、デビュー以来のヒットを受けて続けざまにリリースしていた、絶好調時のアルバムで
す。

スリー・サウンズとしてのデビュー作である「INTRODUCING…」での音の多さに比すと、やや大人向けとも言える落ち着
いた内容かと思います。

ただ、このアルバムと同日の録音に、4072の「FEELING GOOD」があり、LP2枚分(以上)を1日で録音してしまうところ
に、グループの実力や好調のほどを窺うか、アルフレッド・ライオンの思い入れを窺うか、あるいは安直に濫発している無
定見さを窺うかは皆さんのご判断にお任せします。

何せ5年間で12枚をリリースしたグループですから、このくらいは朝飯前だったのかもしれません…。

ジャケット写真の女性は、ご存知のように後のアルフレッド・ライオン夫人となるルース・メイソンその人です。この当時に
おけるブルーノートのジャケットで、件の如きカラー写真の採用は珍しかったはずで、制作者の思い入れ(下心?)が感じ
られてタイトル名とともに妙に納得してしまうのは私だけでしょうか。

いずれにせよ、好調時のスリー・サウンズを捕らえた好盤で、所有欲をそそる1枚には間違いありません。

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スタン・ゲッツ(STAN GETZ)、ジミー・ロウルズ(JIMMY ROWLS)
「ザ・ピーコックス」(THE PEACOCKS)
スタン・ゲッツ(STAN GETZ)、ジミー・ロウルズ(JIMMY ROWLS)の「ザ・ピー
コックス」(THE PEACOCKS)です。
COLUMBIAのオリジナル盤になります。
レコード番号はJC−34873。
パーソネルは、テナーサックスにスタン・ゲッツ、ピアノにジミー・ロウルズ、ベースにバスター・ウィリアムズ、ドラムスにエ
ルヴィン・ジョーンズ、ボーカルにヘンドリックス・ファミリーといったメンバーで、4曲ほどの収録曲にはジミー・ロウルズの
ボーカルもフィーチュアされています。

このレコードは1977年にリリースされたもので、旧友であったゲッツとロウルズの再会セッションみたいなノリかと思わ
れます。

ゲッツとロウルズは、ベニー・グッドマンやウディ・ハーマンのバンドに在籍していたことがあり、それから数えると、この録
音時で30年を超える年月が経過しています。そして20年以上ぶりのリユニオンということになります。

全13曲が収録されていますが、その内6曲がゲッツとロウルズのデュエット、2曲がロウルズのソロ、5曲がクァルテット
による演奏です。

で、結局はゲッツがロウルズを招いて、わざわざ彼にスポットを当てたレコードに仕立てたのではないかと想像されます。
半分近くがゲッツとロウルズのデュエットであることが、それを端的に表している様で、実際にも演奏の水準はデュエット
形式が最もグレードが高いように聴こえます。

クァルテットにおいては、例えばエルヴィンなどは案外に抑えたサポートで、これはアルバムの趣旨に好ましい結果をもた
らしたようです。

のっけからジミー・ロウルズのボーカルが出てきて少々面食らいますが、彼のヤル気のなさそうな、どうでもいいような歌
い方(あるいは弾き語り)は、結構ハマるものがあって、中々興味深いものと言えます。     ジャケット表面にイラスト
で表現されたロウルズが、何ともいい表情なのが印象的なアルバムです。

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スタン・ゲッツ(STAN GETZ)
「チルドレン・オブ・ザ・ワールド」(CHILDREN OF THE WORLD)
スタン・ゲッツ(STAN GETZ)の「チルドレン・オブ・ザ・ワールド」(CHILDREN 
OF THE WORLD) です。
CBSコロンビアのオリジナル盤になりますが、プロモーション用の見本盤で
す。
このレコードは1979年の「国際児童年」を称えて吹き込まれたもので、作曲・編曲・指揮をラロ・シフリンが担当していま
す。主なパーソネルは、テナー・サックスにスタン・ゲッツ、ピアノにラロ・シフリン、アンディー・ラバーンほか、ギターにポ
ール・ジャクソンほか、ベースにスタン・クラークほか、ドラムスにヴィクター・ジョーンズ、その他となっています。真剣勝負
のジャズとは言えないかもしれませんが、こんなリラックスした演奏がゲッツにはまた似合います。

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スタン・ゲッツ(STAN GETZ)
「ピュア・ゲッツ」(PURE GETZ)
スタン・ゲッツ(STAN GETZ)の「ピュア・ゲッツ」(PURE GETZ) です。
CONCORDのオリジナル盤になります。
このレコードは1982年の録音で、パーソネルは、テナー・サックスにスタン・ゲッツ、ピアノにジェームズ・マクニーリー、
ベースにマーク・ジョンソン、ドラムスにヴィクター・ルイスもしくはビリー・ハートです。

この当時のゲッツは随分好調で、コンコード・レーベルに移籍すると、同社のあるサンフランシスコに転居していたそうで、
録音への意気込みが感じられます。ピアノのジェームズ・マクニーリーはこの頃新人扱いされていますが、結構なソロパ
ートを与えられ、ゲッツの期待は高かったようです。コンコードにありがちな若干エッジの強いピアノ音ですが、全体のバラ
ンスは悪い感じではありません。 

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ズート・シムズ、ジョー・パス(ZOOT SIMS, JOE PASS)
「ブルース・フォー・トゥー」(BLUES FOR 2)
ズート・シムズ、ジョー・パス(ZOOT SIMS, JOE PASS)の「ブルース・フォー・ト
ゥー」(BLUES FOR 2)です。
PABLOのオリジナル盤です。
レコード番号はD2310879。
このレコードは、1983年にリリースされたもので、サックスとギターのデュオ作品です。あんまりこういう組み合わせはあ
りませんね。結構珍しい部類じゃないですか?

収録曲は、A面に「Blues For 2」、「Dindi」、「Pennies From Heaven」、「Poor Butterfly」の4曲、B面に「(What Did I Do
To Be So) Black And Blue」、「I Hadn't Anyone Till You」、「Takeoff」、「Remember」の4曲、計8曲です。

パーソネルは、上記の通りデュオですので、テナー・サックスとソプラノ・サックスにズート・シムズ、ギターにジョー・パス
の二人だけです。

A面の1曲目はタイトル曲の「Blues For 2」です。ズートとパスのオリジナルで、ゆっくりめのブルースです。パスのリズム
に乗ってズートが渋めに唄っています。気の向くまま適当に吹いているようで様になってますから大したもんです。途中の
ギターソロは控えめに進んで、ヴァーチュオーソとはちょっと違ったアプローチでフンフンてなもんですな。パスが遠慮して
いるみたいで、結果はOKでした。

2曲目は「Dindi」、アントニオ・カルロス・ジョビンなどの作曲で、要はボサノバですね。どこかで聴いたことがあるなと思っ
ていたら、ウェイン・ショーターの「SUPER NOVA」にも入ってました。スタン・ゲッツなどのボサノバとは趣きが違い、少々
重めだけれど鈍重ではないという微妙な軽さです。パスのソロがいかにも軽やかで軽すぎるかも。と思っていたら、あっと
いう間に終わってました。

3曲目が「Pennies From Heaven」、ジョニー・バークとアーサー・ジョンストンの作曲です。ズートはここでソプラノを吹いて
ます。テナーと同じような乗りですが、ソプラノだけあって軽快に聴こえます。パスの控えめなラインに沿って、快調に吹き
上げてます。ビブラートも含めてクラみたいな音も出してまして、もっと早くから二刀流にしても良かったんじゃないのと思
わないではいられません。で、これをA面の一押しにしときましょうか。

4曲目が「Poor Butterfly」で、これがA面最後の曲。ジョン・ゴルデンとレイモンド・ハッベルの共作で「かわいそうな
蝶々」とはこれ如何に? どうやらプッチーニの「蝶々夫人(Madame Butterfly)」からインスパイアされて作ったそうで、こ
っちはすっかりスタンダードになってしまいました。パスのイントロからいつも通りのズートが登場。しかし、ちょいと抑え目
で、ますます渋めのオッサンでした。

続いてB面の1曲目が「(What Did I Do To Be So) Black And Blue」、アンディ・ラザフ、ファッツ・ウォーラー作の既にトラッ
ドな曲です。ゆっくりしたテンポで淡々としたプレイとでも言いましょうか、盛り上がりに欠けるとも言いますが、まあこんな
ものですか。何かを伝えようという気持ちは分かるんですけど、一体ナニかは、うーん不明でした。大体「Black And Blue」
が意味深で、単に「黒と青」じゃなくて「あざだらけ」っていう意味もあるそうな。さすれば「俺が何をしたってんだ?こんなあ
ざだらけになるなんて」みたいな意味のタイトルですね。実は黒人である悲哀さを唄った作品だったのでした。おどけたフ
ァッツからは想像しにくい正に異色の作品です。そりゃあ白人が演っても、よーわからんでしょう。

2曲目が「I Hadn't Anyone Till You」、レイ・ノーブル作曲だそうで、この人は「Cherokee」を作った人だそうですがよく知り
ません。「あなたが初めてよ(あなたまで誰もいなかった)」みたいな訳ですね。こう言われると男は弱いですね、何でもヤ
ル気になるってなもんですな。「こんな気持ちになったのは、あなたが初めてよ」、「そうなの?」、「もう、どうにでもして」、
「あっ、そう!」なんてノリでどうなるんでしょうね? 展開が楽しみです。ウキウキのナンバーでした。

3曲目は「Takeoff」、ズートのオリジナル・ナンバーです。邦訳は「離陸」なんでしょうが、離陸して何処に着陸するのかは
不明です。ズートお得意のテンポでやってくれます。のっけからブリブリで出てきたと思いきや、パスのリズムで少々落ち
着いて、ゴキゲンなスイングを堪能できます。何だかホントに適当にプレイしているような感じですけど、ヴァーチュオーソ
の為せる技ということで楽しむのが正解でしょうかね。こんなにリラックスして商売になるんだから、やめられまへんなあ
…。

最後の曲が「Remember」、アービング・バーリン作のスタンダード。最後にこんなのを持って来る辺りは、やっぱりニクイ
配慮ですね、グランツさん。抑えた演奏が何とも言えません。けだるいような、哀愁をそそるような、それなりの女性に聴
かせれば、そのまましなだれかかってきそうな名演ですねっ。「やさしく抱かれて瞼をとじて サックスの嘆きを聴こうじゃ
ないか 灯りが消えてもこのままで 嵐が来たって離さない 東京で一つ 銀座で一つ 若い二人が誓った夜の真実の恋
の物語り〜」、って銀恋じゃんか。映画の主人公にでもなった気分にさせてくれるので、これはB面のベスト・トラックという
ことでいかがです?

どうも、このレコードの組み合わせはジョー・パスやノーマン・グランツのアイデアのようで、それに「別に何でもいいよ」的
なズートが乗っかったというのが真相のようです。しかし、まあいい加減なノリで請け負ったものの出来栄えは中々に渋い
もので、何でも来いの境地にあったズートが偉かったわけですね。並みのサックス吹きならこうはいきません。

まあ、このレコードはいわゆる隠れ名盤の一つでしょうね。同じようないでたちのPABLOですけど、その反面ハズレがな
いのもホントでして、これも持ってて損はない1枚です。今までズーッとパスしてきたあなた、真正スインガーだったズート
晩年の快演はいかがですか?

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ズート・シムズ(ZOOT SIMS)
「クワイエットリー・ゼア」(QUIETLY THERE)
ズート・シムズ(ZOOT SIMS)の「クワイエットリー・ゼア」(QUIETLY THERE) 
です。
PABLOのオリジナル盤です。
レコード番号は2310 903。
 このレコードは1984年にリリースされたもので、ちょいと変わったサイドメンを随えたズートのブロウが快適な1枚です。
ジョニー・マンデルの作品集で、彼の7曲を風情たっぷりに謳い上げています。ズート最晩年の録音になりますね。ズート
は1985年の3月に亡くなりました。

パーソネルは、テナー・サックスにズート・シムズ、ピアノにマイク・ウォーフォード、ベースにチャック・バーゴファー、ドラム
スにニック・セローリ、そしてパーカッションにヴィクター・フェルドマン(!)というメンバーです。

収録曲は、A面に「Rissy」、「A Time For Love」、「Cinnamon And Cloves」、「Low Life」の4曲、B面に「Zoot」、
「Emily」、「Quietly There」の3曲、計7曲です。

さて、A面1曲目は「Rissy」で、のっけからズートの太いトーンが快調です。いわゆる快適テンポでブイブイ言ってます。途
中のオルガンは多分ヴィクター・フェルドマンでしょう、オルガンも一応打楽器でパーカッションと言えなくもないです。

2曲目は「A Time For Love」。スローテンポのバラードで、イカにもタコにものムードたっぷりプレイです。ズートはムード・
テナーの世界でも成功したんじゃないかと思わせる、思わせぶりなプレイですな。ただ風貌が怖いんで一般受けはしない
かも…。何せ「愛のとき」みたいな曲名ですから、それなりの情感でヤルのが正解です。ズートに続くマイクのソロもオヤ
ジ受けする雰囲気で、うーん泣かせます。こういう曲でナオン(死語?)を口説くのもイー感じで、コルトレーンのバラードだ
けじゃないのでした。

3曲目が「Cinnamon And Cloves」で、またもや快適テンポに乗ったズートのブリブリ・トーンが印象的です。こういうテンポ
でのズートはモダン・ジャズ界でも屈指の存在じゃないでしょうか? これまた続くマイクのソロが情趣を盛り上げます。最
後はちょっとしつこい感じですが、名演に近い出来で、演奏が終わってからの誰かのセリフが聴こえます。「カムイン!」と
か言っているようで、録音スタジオにかわい子ちゃんでも来たんでしょうか。

A面最後は「Low Life」です。「程度の低い暮らし」とか「貧しい生活」みたいな訳になるんでしょうが、あんまり貧しそうに
は聴こえません。どっちかと言うとウキウキな演奏に終始してます。貧しい暮らしから明日を夢見て頑張ろうってなもんで
すか…。結局ズートに続いてマイクがソロを採るという構成に変わりはありません。ワンパターンと言えばそれまでで、で
もそれなりの雰囲気だから許す。

続いてB面、1曲目は「Zoot」。リーダーと同名の曲で、別にズートに捧げたわけではないんでしょうが、妙にはまっている
ので笑わせます。ここでフェルドマンのヴァイブが入ってます。フェルドマンって昔から意外なところに参加していて独自の
味を見せますから見逃せません、って言うかあんたは一体ナニモノかいな? ムード全開のゆったりほんわかプレイでし
た。

2曲目が「Emily」です。冒頭からフェルドマンのヴァイブが感傷的で、ズートがビブラートも効かせた思わせぶりプレイで続
きます。「エミリー」って具合ですから、女の子の名前ですね。きっと可愛い淑女を想像して演奏しているんでしょう、オヤ
ジ趣味プンプンで、中々イケまっせ。中盤のベース・ソロはかなり良質に聴こえますので、音質チェックにいいかも。これが
収録曲でも最も長い曲で、情感ブリブリのペースが10分近く続きます。ところで、エミリーって誰のことなの?

最後の曲が「Quietly There」、タイトル曲ですね。「そこで、静かに」みたいな訳でしょうが、決して静かな曲ではありませ
ん。ミディアムのゴキゲンなテンポで進みます。ズートのトーンとサイドのメリハリ効いたバッキングでジャズが好きで良か
ったね的な演奏でした。と思っていたら唐突に終わってしまいました。残念ですが、ほとんどコレがズートの最後のプレイ
だったのでした。

ズートは、どういうわけか私と同じ誕生日でして、若い頃は「こんなケッタイなオッサンと同じ誕生日って恥ずかしい」と思
っていたのですが、オヤジの年頃になると「ズートはやっぱりズーッとイイ」と思うようになりました。中年の心をくすぐる存
在ですね。特にこのレコードは、マンデルのロマンチックな曲調がぴったし合って、推薦盤です。

というわけで、音質も中々なズート最晩年の演奏はいかがでしょうか? この頃のPABLOはワンパターンと罵られつつ
も、安全パイの一つで、持っていて損はありません。

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ズート・シムズ(ZOOT SIMS)
「ザ・スウィンガー」(THE SWINGER)
ズート・シムズ(ZOOT SIMS)の「ザ・スウィンガー」(THE SWINGER)です。
PABLOのオリジナル盤になります。
パーソネルは、テナー・サックスにズート・シムズ、トロンボーンにレイ・シムズ、ピアノにジミー・ロウルズ、ベースにジョ
ン・ハードとマイケル・ムーア、ドラムスにシェリー・マンとジョン・クレイとなっています。

このレコードは1979年に録音され1980年にリリースされたもので、膨大なリリース量だったPABLOのアルバム中で
は、隠れた名盤に当たるかもしれません。

大体において駄盤の少ないズートですが、平均点云々よりもこのアルバムが異色なのは、共演者にレイ・シムズというト
ロンボーン奏者が加わっていることで、彼こそズートの兄なのです。

弟の有名さに比して殆どお目に(お耳に)掛かる機会のなかったレイ・シムズのソロ演奏が聴けるアルバムとして貴重な
ものには違いありません。

A面4曲目でレイ・シムズのソロを堪能することができます。これらを聴いて渋いと思うか、味があると思うか、この程度か
と思うかはお任せしますが、弟よりも不遇であったはずの兄の演奏として泣かせるものがないとは言えません。B面の4
曲目ではボーカルまで披露しています。

ジャケットの写真は、同時出品している「HAWTHORNE NIGHTS」のそれと数秒の差もなく撮影されたものと思われ
ます。プレイヤーの写真をモノクロで使用し、共演者のベタ並べという安易ジャケット・デザインをこれでもかとリリースし続
けたノーマン・グランツで、彼も耄碌してボケが入ったなと思っていました。

しかしこれこそがPABLOの名物として、他に比べるもののないブランド・イメージを確立したのではないかと、今にしてグ
ランツの慧眼に恐れ入っています。

今やCDでも見つけ難く、またCDではジャケット・デザインが悉く変更されつつあるPABLO盤ですので、貴重なオリジナ
ルLPはいかがでしょうか。

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ズート・シムズ(ZOOT SIMS)
「ソプラノ・サックス」(SOPRANO SAX)
ズート・シムズ(ZOOT SIMS)の「ソプラノ・サックス」(SOPRANO SAX)です。
PABLO RCAのオリジナル盤、デモ用の非売品商品です。
レコード番号は2310−770。
パーソネルは、ソプラノ・サックスにズート・シムズ、ピアノにレイ・ブライアント、ベースにジョージ・ムラーツ、ドラムスにグ
ラディ・テイトとなっています。

このレコードは1976年1月にNYのRCAスタジオで録音されたもので、ズートがかなり快調だった頃の収録です。

収録曲は、A面に「Someday Sweetheart」、「Moonlight In Vermont」、「Wrap Your Troubles In Dreams」、「Bloos For
Louise」の4曲、B面に「Willow Weep For Me」、「Wrap Up」、「A Ghost Of A Chance With You」、「Baubles, Bangles
And Beads」の4曲、計8曲になります。

ズートのPABLOにおける一連の作品中でも、このアルバムは発表当時に好評をもって迎えられた逸品で、LPですと今
となっては中々市場でお目に掛からないレア品かもしれません。

大体、本人にはソプラノを吹くつもりはなかったようですが、試しに吹いてみたら、とっても具合がよかったということで、晩
年のズートには欠くべからざる楽器になりました。元々試すはずはフルートだったという逸話も有名ではあります。

ジャズでソプラノサックスといえば、かなり古くはシドニー・ベシェ、ちょいと古くはジョン・コルトレーン、最近ではウェイン・
ショーターなどが有名ですが、ズートのソプラノは、そのどれとも違う暖かみを感じさせてくれる名演でした。基本的にアメ
リカの田舎のおっさん風であるズートが吹くんですから、アバンギャルドには成り得ない素朴さがあります。

ズートの容貌はご存知でしょうが、どう見ても田舎もん以外には見えません。昔、ズートによく似た神父を知っていました
が、非常に熱烈なカトリック信者でその言動に些か辟易したこともあったんですが、何だかそれと似たような信念をズート
から感じてしまいます。こういう風貌のおっさんに悪人はいないというようなものです。

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ズート・シムズ(ZOOT SIMS)
「パッション・フラワー」(PASSION FLOWER)
ズート・シムズ(ZOOT SIMS)の「パッション・フラワー」(PASSION FLOWER)
です。
PABLO TODAYのオリジナル盤になります。
レコード番号は2312−120。
パーソネルは、テナー・サックスにズート・シムズ、プラス・ジョンソン、バディ・コレット、アルト・サックスにマーシャル・ロイ
ヤル、フランク・ウェス、トランペットにボビー・ブライアント、アル・アーロンズ、オスカー・ブラッシャー、アール・ガードナー、
トロンボーンにJ.J.ジョンソン、ブリット・ウッドマン、グローバー・ミッチェル、ベニー・パウエル、ピアノにジミー・ロウル
ズ、ベースにジョン・ハード、アンディ・シンプキンス、マイケル・ムーア、ドラムスにシェリー・マン、ジョン・クレイ、グラディ・
テイトとなっています。さらに、アレンジと指揮をベニー・カーターが担当しています。

このレコードは1979年の8月、12月などに録音され1980年にリリースされたもので、リーダーにズート・シムズを据
え、ビッグ・バンド風のバックを設えたグループによる演奏です。

時期的にはズートが好調だった頃に当たり、数多あるPABLOのリリース中でも異色の存在と言えます。

パーソネル自体も興味深い人選ですが、ベニー・カーターのアレンジには一日の長が感じられ、リラックスした中にも聴き
応えのある演奏を楽しめます。

ジミー・ロウルズのピアノが中々のアクセントを示しており、単なるベテランの再会セッションと断ずるのは早計に過ぎま
す。

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ズート・シムズ(ZOOT SIMS)
「ホーソーン・ナイツ」(HAWTHORNE NIGHTS)
ズート・シムズ(ZOOT SIMS)の「ホーソーン・ナイツ」(HAWTHORNE NIGHTS)
です。
PABLO原盤のRCAによるリイシュー盤と思われます。
パーソネルは、テナー・サックスにズート・シムズ、バリトン&バス・クラリネットにビル・フッド、クラリネットとテナー・サック
スにリッチー・カミューカ、その他リードにジェローム・リチャードソン、トロンボーンにフランク・ロソリーノ、トランペットにスヌ
ーキー・ヤングほか、ピアノにロス・トンプキンス、ベースにモンティ・バドウィック、ドラムスにニック・チェローリとなっていま
す。また、アレンジと指揮をビル・ホルマンが担当しています。

このレコードは1976年に録音され1977年にリリースされたもので、一時矢鱈とリリースされたPABLOのアルバム中
では、それほど人口に膾炙しなかった1枚で、却ってレアかもしれません。

1970年代後半から80年にかけて、ズートは好調を維持していたと考えられ、加えて駄盤の少ない人ですから、結果は
似たような出来になろうことが予想されますが、このアルバムはアレンジをビル・ホルマンが担当し、かつてのハーマン・
バンド(フォー・ブラザーズとかの)を彷彿とさせる演奏をも繰り広げます。

こう考えますとキャリアの長いプレイヤーでしたね、ズートは。正にズーッとプレイし続けてきたんですな。

ジャケットの写真は、同時出品している「THE SWINGER」のそれと数秒の差もなく撮影されたものと想像されます。何
故にこういう写真をしつこくもジャケットに使用して同じようなデザインを延々と続けるのか、当時のグランツの趣味を疑い
ますが、今となっては一目で分かるPABLO盤ということで、功罪相半ばする効果を齎しているようです。

今やCDでも見つけ難く、またCDではジャケット・デザインが悉く変更されつつあるPABLO盤ですので、貴重な(?)LP
でいかがでしょうか。

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