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ソニー・スティット(SONNY STITT)
「ウィズ・ストリングス」(WITH STRINGS TRIBUTE TO DUKE
ELLINGTON) |
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ソニー・スティット(SONNY STITT)の「ウィズ・ストリングス」(WITH STRINGS
TRIBUTE TO DUKE ELLINGTON)です。
CATALYSTのオリジナル盤になります。
レコード番号はCAT−7620。 |
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このレコードは1977年に録音されたもので、ソニー・スティットが亡きデューク・エリントンに捧げたアルバムです。収録曲
には、冒頭の「TAKE THE "A" TRAIN」からエリントン・ナンバーが続き、「PRELUDE TO A KISS」、「COTTON TAIL」、
「IN A SENTIMENTAL MOOD」、「IN A MELLOW TONE」など有名な楽曲で占められています。
パーソネルは、アルト・サックスとテナー・サックスにソニー・スティット、ピアノにギルド・マホネス、ベースにアレン・ジャク
ソン、ドラムスにクラレンス・ジョンストン、加えてビル・フィネガン・ストリング・アンサンブルとなっています。
要はワン・ホーン・クァルテットにストリングスが付加されたアルバムで、アレンジをビル・フィネガンが担当しています。ス
ティットの演奏を浮き立たせるようなアレンジになっていますから、ストリングスがでしゃばり過ぎず違和感は感じません。
曲によってテナーとアルトを持ち替えるスティットで、どちらにおいても彼なりのスィング感を提供してくれます。強いて言う
なら、アルトの方がよりアグレッシブかつナイーブな質感で、テナーはごく普通なのかもしれません。これは聴く人の判断
にお任せします。
サイドメンでは、ギルド・マホネスの控え目ながら堅実なサポート、案外にイケるアレン・ジャクソンのベースが聴きもので
す。
ジャケットの程度がそれほど良くないので低価格からスタートしますが、盤自体の程度は良好ですから、お買い得かもし
れません。 |
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ソニー・スティット(SONNY STITT)
「ソニー・スティット・プレイズ」(SONNY STITT PLAYS) |
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ソニー・スティット(SONNY STITT)の「ソニー・スティット・プレイズ」(SONNY
STITT PLAYS)、ROOSTのオリジナル盤になります。もちろんモノラルです。
レコード番号は、LP2208。 |
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余談ながら、ROOSTはこの数年後にROULETTEに買収されて、後年は例の目の回りそうなルーレット・レーベルにな
ってしまいますが、このオリジナルでは嬉しい青レーベルです。こっちの方がやっぱり落ち着きますね。
パーソネルは、アルト・サックスにソニー・スティット、ピアノにハンク・ジョーンズ、ギターにフレディ・グリーン、ベースにウェ
ンデル・マーシャル、ドラムスにシャドウ・ウィルソンというメンバーで、フレディ・グリーンはA面のみに参加しています。
このレコードは1956年の9月に録音されたもので、ROOSTでは、あの有名な「From The Pen Of Quincy Jones」の次
にリリースされました。この後が「With The New Yorkers」になりますが、メンバーは本アルバムとほとんど一緒で、フレ
ディ・グリーンが入っている分、こっちの方がエラそうです。
ソニー・スティットといえば、若い頃にあまりにもパーカーに似ていると言われて拗ねたのか、パーカーが亡くなるまでテナ
ーを吹いていた、いわゆる「スティット、暫くアルトを止めてテナーにする事件」で有名ですが、このアルバムはパーカーの
死後に吹き込まれていますので、「俺っち、やっぱりアルトだもんね」とでも言うがごとく、屈託なしのブリブリ・プレイが聴
けます。「Pen Of Quincy」のプレイどころではありません。拘束なしのワン・ホーンが大変よく似合う名手なのでした。
恥ずかしながら、私は学生の頃からスティットのファンでして、最初に聴いたレコードはATLANTICの「Stitt Plays Bird」
だったと記憶します。一時期はスティットのコンプリートを目指すという暴挙にも出ましたが、あまりの多さに呆れたのと、
スティットはもしかしたらマンネリかもしれないという邪念に捕われて諦めました。
大体、生涯を通じて劇的な変化をしなかったスティットですから、「何を聴いても同じだよーん」という人も居られるのです
が、実は偉大なるマンネリをちょいと超えたところに彼は居たんだろうと私は思います。80年代に来日したときは是非聴
きに行きたかったのですが、こき使われる会社に勤めていたもので機会を逃してしまい、そのままスティットは死んでしま
いました。当時は結構後悔したものです。
収録曲は、A面に「There'll Never Be Another You」、「The Nearness Of You」、「Biscuit Mix」、「Yesterdays」の4曲、
B面に「Afterwards」、「If I Should Lose You」、「Blues For Bobby」、「My Melancholy Baby」の4曲、計8曲になります。
このうちあまり聞いたことのない3曲「Biscuit Mix」、「Afterwards」、「Blues For Bobby」がスティットのオリジナルになりま
す。「Blues For Bobby」のボビーって誰か気になるところですが、案外ボビー・ティモンズかなと思います。この翌年の
「Personal Appearance」で珍しくもボビー・ティモンズと共演してますからね。
パーソネルを眺めていると、ハンク・ジョーンズ以外はすべて故人になってます。と言うか、ハンク・ジョーンズってまだ生
存しているのです。1918年生まれだそうですから来年は90歳です。去年だったかに来日して演奏していたと言います
から、恐るべき生命力ですな。二人の弟も既に故人だというのに…。この録音の数年後にはフリーになってスタジオ・ミュ
ージシャンの嚆矢みたいになり、70年代中盤まで隠れて活動していたのが、結局は長生きの秘訣だったのかもしれま
せん。このアルバムの録音時に、既に「おら、フリーでのんびりやるだ」と思っていたかどうかは不明です。ここでは最早
端正ながら力感を感じさせるプレイで、出来上がっているタッチを聴かせています。
A面にフレディ・グリーンが参加しているのがこのアルバムの一つのキモではあります。生涯リズムしか刻まなかった彼
ですが、彼の居ないC.B.が気の抜けたビールみたいになるのと同様、彼が入ると自然にスイングするから不思議で
す。A面を通じて鮮明に聴こえますから、グリーンのファンにも儲けものの1枚に違いありません。
ベーシストのウェンデル・マーシャルは、知らなかったんですがジミー・ブラントンの従兄弟で、かのブラントンから手ほどき
を受けたそうです。50年代にエリントン楽団で有名でしたから、やはりここでも目立ちませんが、それなりのプレイを聴か
せてくれます。ブラントンが夭折したのに比べて、彼は2002年まで生きながらえました。
ドラムスのシャドウ・ウィルソンは、何だか影武者みたいな名前ですが、この後、モンクやコルトレーンとファイヴ・スポット
に出演して話題を呼んでいます。で、その後あっけなく死んでしまいました。生きていたらどうなっていたか、それは誰に
も分かりません。
パーカー・トーンも垣間見え、溌剌プレイが身上のスティットですが、パーカーのような破滅型ではなかったが故に聴いて
いてどことなく安心感があり、癒しの面も感じさせてくれるから、やっぱり止められませんねえ。もう一度コンプリートを目指
しましょうか…。
ところで、ジャケットの写真ですが、紫煙のたゆたう中にスティットが横アングルで写っています。見ようによってはネアン
デルタール人にも見えないことはなく、このくらい強そうな顎でないとサックスを自由自在に吹きこなせないのかなと思わ
ないではいられません。名アングルの1枚です。
スティットが好きなもので、長々と綴りましたが、持ってて損はない1枚です。ホントは手元に置いておきたかった1枚なの
でした。このビッグ・ネームをオリジナル盤でいかがでしょうか? |
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ソニー・ロリンズ(SONNY ROLLINS)
「モア・フロム・ザ・ヴァンガード」(MORE FROM THE VANGUARD) |
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ソニー・ロリンズ(SONNY ROLLINS)の「モア・フロム・ザ・ヴァンガード」
(MORE FROM THE VANGUARD)です。
BLUENOTEのオリジナル盤、モノラル仕様、2枚組みです。
レコード番号はBL−NA475−H2。 |
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パーソネルは、テナー・サックスにソニー・ロリンズ、ベースにドナルド・ベイリー、ウィルバー・ウェア、ドラムスにピート・ラ・
ロッカ、エルヴィン・ジョーンズです。ベースとドラムスが二人ずつクレジットされていますが、これは同日のライブながら、
昼間と夜間のセッションでの違いになり、ドナルド・ベイリーとピート・ラ・ロッカはお昼の部、ウィルバー・ウェアとエルヴィ
ン・ジョーンズは夜の部ということです。
このレコードは1957年11月3日に、ヴィレッジ・ヴァンガードで録音されたライブ盤で、既にBLUENOTE 1581として
リリースされていた「A NIGHT AT THE VILLAGE VANGUARD」の未発表録音集になります。
後年、コンプリートな形で収録順に編集されたCD2枚組みがリリースされますが、今回のアルバムが世に出るまで、
「VILLAGE VANGUARD」の未発表曲に出会えるなどとは想像もしていませんでした。それ故に初めてこのアルバムを目
にしたときの驚きは例えようのないものだったと記憶します。
元々の1581はロリンズにとって3大名盤の一つとされるほど有名なアルバムです(残りの2枚は「SAXOPHONE
COLOSSUS」と「WAY OUT WEST」というのが一般的な解釈でしょうか…)。
このアルバムでロリンズが挑んでいるピアノレス・トリオの形態ですが、この編成を一般化したのは間違いなくロリンズそ
の人で、この録音に遡ること8ヶ月前にロリンズ最初のピアノレス・トリオによるアルバム「WAY OUT WEST」がCONTE
MPORARYに録音されています。
本作はピアノレス・トリオによるライヴ・レコーディングで、ロリンズにとっても初のライヴになります。
「WAY OUT WEST」は確かに名盤で、そのまとまり具合も技巧的にも、ウェストの名手であったレイ・ブラウンとシェリー・
マンのお陰を被っている局面を感じさせます。
それに比して、ヴァンガードでの録音はライブということもあり、一段とアグレッシブなプレイを披露しています。
特に変態ベーシストの異名を誇るウィルバー・ウェアとプッシュ命のエルヴィン・ジョーンズとのプレイが、(聴き様によって
は)鬼気迫るものも感じられて異様な雰囲気をもたらしてくれます。
こういった演奏に、どういうわけかルディ・ヴァン・ゲルダーのしつこめの録音が妙にマッチします。このライブ・スポットの雰
囲気を絶妙に伝えているのです。
エルヴィンのゲロゲロ声もしっかりと収録されており、ゲロゲロに負けじとブンブンベースを奏でるウェアも秀逸で、私はこ
の日のライブ演奏を非常に好ましく思っています。
また、昼の部のベイリーとラ・ロッカですが、実はこのメンバーでの演奏にも耳を傾ける必要があります。夜の部ほどアク
は強くありませんが、適当なスムーズネスとメリハリをしてロリンズの演奏も縦横無尽に空間を埋め尽くしているように私
には聴こえます。何故にオリジナル1581には昼の部の「A NIGHT IN TUNISIA」が収録されたのか、お分かりいただける
のではないでしょうか。
いずれにせよ、オリジナル1581に本アルバムを加えれば、ロリンズの1957年11月3日は完全に網羅できます。コン
プリートCD盤もお手軽で結構ですが、そもそもの音なり演奏なりは、やっぱりLPかなと思います。 |
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