のとnoノート - JAZZ(ジャズ)レコード評 -
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キティ・カレン(KITTY KALLEN)
「イフ・アイ・ギヴ・マイ・ハート・トゥ・ユー」(IF I GIVE MY HEART TO
YOU)
キティ・カレン(KITTY KALLEN)の「イフ・アイ・ギヴ・マイ・ハート・トゥ・ユー」
(IF I GIVE MY HEART TO YOU)、モノラル仕様です。
COLUMBIAのオリジナルに近いリイシューのように見えます。
レコード番号はCL1409。
パーソネルは不明で、ミルトン・デ・ラグの指揮によるオーケストラがバックを努めています。

このアルバムは1959年に録音されたもので、ハリー・ジェイムス楽団にいた1940年代以降では彼女の代表盤と言え
ます。

キティ・カレンを紹介する際には「Pretty Kitty Kallen…」というのが決まり文句だったらしく、「可憐なカレン」を的確に示し
た好アルバムかと思います。

収録曲は、A面に「Need Me」、「Driftwood On The River」、「Always In My Heart」、「Never In A Million Years」、
「Because You're Mine」、「Got A Date With An Angel」の6曲、B面に「If I Give My Heart To You」、「Blues In My
Heart」、「That Old Feeling」、「Vaya Con Dios」、「Blue Doll」、「Love Is A Sacred Thing」の6曲の計12曲で、ハイライト
はB面、1曲目のタイトル曲である「If I Give My Heart To You」に間違いはなく、当時の全米でかなりのランクまで上昇し
たヒット曲になります。

キティ・カレンは1922年生まれですから録音当時は37歳だったわけで、いかにもトウが立ちまくった年齢ではあるもの
の、歌唱を聴いている限りではそういうトウはあまり感じません。相変わらずの可憐で(?)寛いだ歌声を聴かせていま
す。

今やLPではあまり見かけなくなったアルバムで、CDでは「HONKY TONK ANGEL」と安易にカップリングしたものが出回
っているようですが、持てる者の喜びとしてはLPに勝るものはないでしょう。

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キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY)
「イン・サンフランシスコ」(IN SAN FRANCISCO)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「イン・サンフランシ
スコ」(IN SAN FRANCISCO) です。
リバーサイドのオリジナル盤になります。
キャノンボールのおそらくは最高傑作の一つだと思います(私はこれが一番気に入っていました)。

パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、コルネットに弟のナット・アダレイ、ピアノにボビー・ティモン
ズ、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムスにルイス・ヘイズで、何とも真っ黒けのクインテット。演奏も推して知るべしでしょ
う。

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キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY)
「キャノンボール・イン・ニューヨーク」(THE CANNONBALL
ADDERLEY SEXTET IN NEW YORK)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「キャノンボール・イ
ン・ニューヨーク」(THE CANNONBALL ADDERLEY SEXTET IN NEW YORK) 
です。
RIVERSIDEのオリジナル盤モノラル仕様になります。
レコード番号はRLP-404。
パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、コルネットに弟のナット・アダレイ、テナー・サックスにユゼフ・
ラティーフ、ピアノにジョー・ザヴィヌル、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムスにルイス・ヘイズで、「IN SAN FRANCISCO」と
比べると、ピアノがボビー・ティモンズからジョー・ザヴィヌルに代わり、テナーにユゼフ・ラティーフが加わったことになりま
す。

このレコードは1962年にニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードで録音されたライブ盤で、「IN SAN FRANCISCO」から3
年程あとのアルバムです。プロデューサーはご存知のオリン・キープニューズです、まだ生きてるそうですよ。

ピアノが真っ黒けの代表選手たるボビー・ティモンズからジョー・ザヴィヌルに代わりましたので、黒さが薄れるかと危惧さ
れましたが、ご存知のように白くても黒いザヴィヌルでしたから、そういう心配は杞憂に過ぎませんでした。

また本国に比べて日本での評価があまりにも低いユゼフ・ラティーフで、確かに些か抹香くさい雰囲気(中東気分とも言
います)を醸し出すラティーフは日本人の感覚とはちょいとズレているところがあるかもしれません。とは言うものの、おそ
らくは音楽監督的地位にザヴィヌルがいたので、中々に充実したセクステットだったんじゃないかと想像されます。

収録曲は、A面に「Introduction」、「Gemini」、「Planet Earth」の3曲、B面に「Dizzy's Bisiness」、「Syn anthesia」、
「Scotch and Water」、「Cannon's Theme」の4曲、計7曲です。

キャノンボールって、当たり前なんですがあだ名でして、本名はジュリアンでした。何だかニューハーフみたいな本名です
ね。大体、太ったオッサンにジュリアンはないでしょう。こういう太り方をしたオッサンに陰鬱な人はあまりおらず、陽気な
人が多いですね。例に違わずキャノンボールもホントに脳天気に笑かしよるオッサンで、それほど賢そうに見えないところ
が粋です。弟のナットがまたよく似た体型の似た者兄弟ですから、漫才コンビでも大成したんじゃないかと想像されます。

マイルスの下を辞してからのキャノンボールの諸作はオーバー・ファンクと揶揄される傾向も持ち合わせていたかもしれま
せん。しかし、単に節操がないという一言で括るにはあまりにも勿体無い、熱気溢れる演奏には間違いなく、このアルバ
ムもキャノンボールの特質が横溢した名盤だろうと思います。

なお、レコード番号ですが、盤での表記はRM−404になっていますが、ステレオ仕様とモノラル仕様が同時に存在した
この時期には、「RS」がステレオ、「RM」がモノラルを表していたように推測されます。ジャケットでは「RLP-404」の表
記になっています。

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キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY)
「フィドラー・オン・ザ・ルーフ」(FIDDLER ON THE ROOF)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「フィドラー・オン・
ザ・ルーフ」(FIDDLER ON THE ROOF) です。
CAPITOLのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。
レコード番号はST2216。
パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、トランペットとコルネットに弟のナット・アダレイ、テナー・サック
スとフルートにチャールズ・ロイド、ピアノにジョー・ザヴィヌル、ベースにサム・ジョーンズ、ドラムスにルイス・ヘイズで、
「IN NEW YORK」のメンバーからユゼフ・ラティーフが抜け、代わりにチャールズ・ロイドが加わったという構成になります。

このレコードは1964年にニューヨーク(!)のキャピトル・スタジオで録音されたもので、録音年月日の前後はあるもの
の、CAPITOLへ移籍してからセクステットとしての初アルバムになるようです。

収録曲は、A面に「Fiddler On The Roof」、「To Life」、「Sabbath Prayer」、「Chavalah」の4曲、B面に「Sewing
Machine」、「Now I Have Everything」、「Do You Love Me」、「Matchmaker」の4曲、計8曲です。

アルバム・タイトルの「Fiddler on the roof」とは、すなわち邦訳「屋根の上のヴァイオリン弾き」ということで、演奏曲は件
のミュージカルに題材を求めたものになります。大体、このミュージカルのブロードウェイ初演が1964年とされています
から、その同じ年に録音しているわけで、「My Fair Lady」の前例があるとは言え、中々流行に敏感なCAPITOLの姿勢
が窺えますな、良きにつけ悪しきにつけ。

題材がミュージカルなんですが、そこはキャノンボール、決してオリジナルらしきアレンジがミエミエの演奏にはなっていま
せん。はっきり言って、毎度おなじみイケイケ路線で行きたくてしようがないといった趣きを感じさせてくれる好演です。つ
まりは抑えようとしても抑えきれない血が騒ぐんですね、この方は。

何でも、この録音前にはフィラデルフィアへツアーに出ており、ツアー中に幾らかリハーサルしたのみでこの録音に臨んだ
といいますから、そんな極端に原曲のアレンジなんぞを尊重した演奏ができるはずもありません。と言うか、そうでなくて
良かったんじゃないすかね、結果としては。

1964年にテナー・サックスがユゼフ・ラティーフからチャールズ・ロイドに交代しましたので、例のアジアン・フレーヴァー
(抹香くさいともいいます)は姿を消し、モダン調に変化した時期に相当します。このアルバムでもロイドのフルートがフュ
ーチュアされていますが、ちょいと吹きだしそうな印象を覚えるのは私だけでしょうか…。おもろいでっせ。

しかし、ジョー・ザヴィヌルは相変わらず好調なようで、欧州人とは思えないファンクさを現していますし、ベースのサム・ジ
ョーンズも図太い音でビンビン迫ります。

キャノンボールなんですが、渾名というか通称というか芸名なのは、よくご存知でしょうが、本名は「ジュリアン」ですから
笑わせますね。しかしあの巨体に「ジュリアン」が似合わないのは当ったり前で、芸名にしといてよかったね。

ジャズに興味をもちだした頃に、何処かの雑誌でこんな文章を目にしました。「ブルーノートのキャノンボールのサムシン
エルスのマイルスのオータム・リーブスは傑作だ」、普通の人が普通の知識でこんな文章を初見で理解できるわけがな
い。「青い冊子の砲弾の何かのマイルス…」にしかならんよね。

とまあ、いろいろ話題に事欠かないキャノンボールではありました。

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キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY)
「ホワイ・アム・アイ・トゥリーテッド・ソー・バッド!」(WHY AM I
TREATED SO BAD!)
キャノンボール・アダレイ(CANNONBALL ADDERLEY) の「ホワイ・アム・アイ・
トゥリーテッド・ソー・バッド!」(WHY AM I TREATED SO BAD!) です。
CAPITOLのオリジナル盤、モノラル仕様になります。
レコード番号はT−2617。
パーソネルは、アルト・サックスにキャノンボール・アダレイ、コルネットに弟のナット・アダレイ、ピアノにジョー・ザヴィヌ
ル、ベースにヴィクター・ガスキン、ドラムスにロイ・マッカーディというクインテット構成です。

このレコードは1966年にリリースされたとされていますが、一説によると1967年にLAで録音されたとも言われており、
真偽は定かではありません。レコード番号からは1966年頃ではないかと想像されますが…。

いずれにしても、キャノンボールが日本に来て録音した「IN JAPAN」と同じメンバーですから、ほとんど変わりのない演奏
と言って過言ではありません。と言うより、実はこのアルバムのほうが「IN JAPAN」よりもファンキー、ノリノリです。日本で
手抜きしていたのか、CAPITOLお膝元のLAで頑張ったのか、ご想像にお任せします。「Mercy, Mercy, Mercy」が入っ
ていたので、「IN JAPAN」を買いましたが、期待に違う出来でがっかりしたことを思い出します。日本の聴衆が大人しく
て、録音も小綺麗なのが却って災いとなった好例でしょう。熱気たるや、このアルバムに軍配が上がります。

特にホーンとピアノのプレイが歴然と違うように聴こえます。ボビー・ティモンズと交代したザヴィヌルですが、白さを全く感
じさせない黒さで、違和感は全くありませんね。今はどうしているのでしょうか…。

収録曲は、A面に「Mini Mama」、「I'm On My Way」、「Why?(Am I Treated So Bad)」の3曲、B面に「One For Newk」、
「Yvette」、「The Other Side」、「The Scene」の4曲、計7曲になります。

1曲目から全開バリバリです。この曲はカーティス・フラーの作曲らしいのですが、そんなものはどこへやら、ファンキー・コ
テコテの名演です。曲が終わってから、おそらくはキャノンボールの「ミニママ、ミニママ」と叫んでいる声がイカシテます
か?

2曲目は、ナットの頑張りぶりが顕著な演奏です。何せ自作自演ですから頑張るのも無理ないところで、カワユスですか
ね。

3曲目は何だかよく分からないタイトルですが、「Mercy, Mercy, Mercy」に似ているように聴こえる曲で、多分ここからザ
ヴィヌルはインスピを得たのではないかと勝手に勘繰っています。結局は頂いちゃったのかよ、ザヴィヌル。

さてB面、4曲中の3曲にザヴィヌルのクレジットがあり、脳天気なキャノンボールに代わって音楽監督的位置を占めてい
たであろうザヴィヌルの真骨頂が聴けるんじゃないかとワクワクしますね。

1曲目の「One For Newk」ですが、「Newk」といえば、確かソニー・ロリンズのニックネームじゃなかったですかね。ロリン
ズに捧げるんだから、それなりの出来を期待しますね。期待ははてさてどうですか、ザヴィヌルのバッキングがホーンを鼓
舞してヨサゲです。普通の白人ならこんなプレイは望むべくもないほどクロクロで、若い頃に頑張りすぎてハゲたんでしょう
かね。ヒゲだけは後年もモッコリでしたけど、頭髪はどうだったんでしょう。この当時の日本公演を知らないだけに何とも言
えません。

2曲目の「Yvette」って、誰かの名前なんでしょうか? やけにゆっくりしたテンポでコテーっと続きます、と思ったらあっと
いう間に終わってしまいました。

3曲目はナットの手による曲で、相変わらずのパープーな雰囲気を横溢させた名曲で、これが長い、8分以上もあるブリブ
リ・プレイです。キャノンボールの後を受けたナットのプレイは、最初はシミジミと出てきたなと思いきや、すぐにいつものノ
ーテンキ路線でイカシテます、ワッハッハ。ここでもザヴィヌルはブラックで、一体ナニを食べてたんだか、教えてくれよ。タ
イトルは「もう片一方」とかいう意味なんでしょうが、どこが「もう片一方」なのか分かりませんね、同じサイドじゃないの?

最後の曲はナットとザヴィヌルの共作になっている曲ですが、いかにものテーマ・ソングらしく、パーソネルを紹介して終わ
ります。言わば、全くのオマケ、キャノンボールの声がよく響きます。で、おしまい。

マイルスの下を辞してからのキャノンボールの諸作はオーバー・ファンクと揶揄される傾向も持ち合わせていたかもしれま
せん。しかし、単に節操がないという一言で括るにはあまりにも勿体無い、熱気溢れる演奏には間違いなく、このアルバ
ムもキャノンボール・クインテットの特質が横溢したレア盤じゃないかと密かに思っています。

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キャブ・キャロウェイ(CAB CALLOWAY)
「ハイ・デ・ハイ・デ・ホー」(HI DE HI DE HO)
キャブ・キャロウェイ(CAB CALLOWAY)の「ハイ・デ・ハイ・デ・ホー」(HI DE HI 
DE HO)です。
RCA VICTORでのオリジナル盤になります。
レコード番号は、LPM−2021。
パーソネルは、よく分かりません。「キャブ・キャロウェイ・アンド・ヒズ・オーケストラ」でおしまいです。とりあえず、毎度の
調子で歌っているのがキャブ・キャロウェイで、後はその他大勢といったところです。

収録曲は、A面に「The Hi De Ho Man That's Me」、「I'll Be Around」、「Summertime」、「It Ain't Necessarily So」、
「Kickin' The Gong Around」、「You Rascal You」の6曲、B面に「Minnie The Moocher」、「I See A Million People」、
「St.James Infirmary」、「Stormy Weather」、「The Jumpin' Jive」の5曲、計11曲です。

このレコードは1958年にリリースされたもので、ニューヨークのRCAヴィクター・スタジオで録音されています。スタジオ
録音であっても、キャブはいつものキャブで、聴衆など居なくても全開バリバリです。

ア○の一つ覚えなどと言ってはいけません。キャブ・キャロウェイこそ黒人エンタの最高峰、神様的存在で、ファッションか
らスタイルから、当時の黒人文化を率いた正に「ジ・エンターテインメント」そのものであります。

のっけから「The Hi De Ho Man That's Me」でやっつけてくれます。「ハリハリ、ヒリヒリ、ホレホレ」とキャロウェイ節全開
で、何なんでしょうね、このノリは。常人の及ぶところではありません。

2曲目の「I'll Be Around」は、一転してムーディーなバラードです。「俺っちは、こんなのもできるんだもんね」とでも言いた
げな情感たっぷりな歌唱です。一流スイングバンドだった片鱗が垣間見れます。

3曲目は、また有名な「Summertime」で、ここでも2曲目と似たような解釈で迫ります。さあ、これからという辺りで終わっ
てしまいました。テーマだけかいな。

4曲目が「It Ain't Necessarily So」。大人しめに始まったかと思いきや「ヒリヒリ・ビリリリー」とお馴染みのキャロウェイ節
が展開されます。正に「必ずしもそうじゃない」を地でいくようなこういうアレンジが受けるんでしょうね。

5曲目は「Kickin' The Gong Around」です。ヒリヒリ・シャウトとコーラスの掛け合いが時代を感じさせつつ快調です。何を
言っているのかはほとんど分かりませんが…。

6曲目が「You Rascal You」で、翻訳ソフトによりますと「あなた・悪党・あなた」だってさ。「ユー・ラスカル・ユー」と掛け合
って落ちがあるという構成で、5曲目と同じような解釈ですね。何度聴いても飽きるような飽きないような不思議な印象で
スイングです。ラスカルってのはアライグマかと思っていたのですが、どうやらアライグマは悪党だそうで、かのテレビ番組
とはちょっとそぐわないかと思いきや「いたずらっ子」という意味もあるそうなので、そんなものなのでした。ところで、「You
Lucky Rascal」になると、「この果報者め」とか「この幸せものー」みたいな意味になるそうです。演奏自体は正にそんな感
じです。

長くなりますので、B面のご紹介は省略しますが、有名な曲が目白押しですから、全く損はありません。こういう録音を彼
が元気なうちに遺そうとしたRCAの慧眼に敬服しておきましょう。

一般的な解釈では、キャブ・キャロウェイは戦前のSP時代には一流のスイング・バンドと見做されて幾つかのレコードが
あったのですが、戦後は何だか異端扱いされて入手できるレコードもなく、ほとんど虐待に近い扱いだったそうです。

1980年頃に、何と「おもしろ音楽大集合」とかいうシリーズの一つとして日本盤でリリースされたようですが、結局は映
画「ブルース・ブラザーズ」に登場してから再認識されたというのが偽らざるところで、日本でのこのリリースに至ったんで
しょうかね。何か本来ではない感じではあります。

ブルース・ブラザーズに出演したのが契機になったのかどうか、確か1980年代のセサミ・ストリートにも登場して、歌って
踊っていました。キャブが現われるやいなや、諸手を挙げて「Yeah! Cab Calloway!」と叫んでいたパペットを思い出しま
す。

また「You Tube」 だったかで、彼の若かりし頃の映像を見ることができます。まあ映画になっても全然おかしくない出来
の映像で、エンタの神様的存在感をヒリヒリ・ハリハリと発散していましたね。何だかスゴイんです。

キャロウェイといえば、ゴルフクラブしか思い出さないオジサンも多いでしょうが、本家キャロウェイはこれですよ。ゴルフク
ラブは「Callaway」ですけどね…。

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ギル・エヴァンス(GIL EVANS)
「スヴェンガリ」(SVENGALI)
ギル・エヴァンス(GIL EVANS)の「スヴェンガリ」(SVENGALI)です。
ATLANTICのオリジナル盤になります。
レコード番号、SD−1643、ステレオ仕様です。
パーソネルはギル・エヴァンス・オーケストラで、ピアノにギル・エヴァンス、トランペットにテックス・アレン、ハンニバル・マ
ーヴィン・ピーターソン、リチャード・ウィリアムス、テナーサックスにビリー・ハーパー、アルトサックスにデヴィッド・サンボ
ーン、フレンチホルンにピーター・レヴィン、シャロン・フリーマン、トロンボーンにジョセフ・デイリー、その他リードにハワー
ド・ジョンソン、トレヴァー・ケーラー、ギターにテッド・ダンバー、ベースにハーブ・ブッシュラー、ドラムスにブルース・ディト
マス、パーカッションにスーザン・エヴァンス、シンセサイザーにデヴィッド・ホロヴィッツというような構成です。

このレコードは、1973年にリリースされたもので、ギル・エヴァンスとしては一つのピークに当たるのではないでしょう
か。この翌年だったかに、「Plays Jimi Hendrics」をリリースしていますね、こちらも名盤です。

大体、日本でもアメリカでも過小評価の最たる人でして、マイルスと共演したことのある白髪のオッサンくらいの認知度し
かなかった彼でした。しかしこの頃から達者なソロイストを揃えて、魅力的な音楽を奏でていたことはこのアルバムからも
明らかですね。この後、ジャコ・パストリアスを加えたオーケストラで来日もし、NYのクラブにも毎週出演していたようで、
晩年になって漸く陽の目を見たというところでしょうか。

1970年代のいつ頃だったか、かのSJ誌にインタビュー記事が載っていました。若かりし私はその記事を読んでも「何だ
か変なオッサンだなあ」くらいの感想しか抱きませんでした。リリースされたレコードもその当時は少なかったと思います。
もう少し早く前線に出て来てほしかった一人には間違いありません。

ところで、タイトルの「SVENGALI」は「GIL EVANS」のアナグラムだって知ってました? 誰でもわかりますか…、失礼。で
も「スヴェンガリ」って何なの?と尋ねられると返答に窮しませんか。実は「スヴェンガリ」とはイギリスの有名な小説(もし
くは戯曲)に出てくる悪魔的人物の名前なのです。異常な芸術に対して、それらへの偏執の余り、正しく異常で悪魔的行
動を採ってしまう人物のことで、邦題「悪魔スヴェンガリ」で公開された映画もあったそうです。私は見ていませんが、さぞ
かし普通じゃない映画だったんでしょうね。

というわけで、この辺りのレトリックが洒落てて、実に「音の魔術師」たるギル・エヴァンスへの敬意も込めたタイトルなの
かと想いを巡らせてくれます。

収録曲は、A面に「Thoroughbred」、「Blues In Orbit」、「Eleven」の3曲、B面に「Cry Of Hunger」、「Summertime」、
「Zee Zee」の3曲、計6曲になります。

さて1曲目の「Thouroughbred」ですが、これは「サラブレッド」ですね。競馬を連想させますが、アメリカでのそれは競馬
ではないようで、ホルンとチューバが効果的に「ブリブリ」いってます。ギターソロの後はチューバのソロが挟まれており、
これが聴きもの。何だかドルフィーじゃないですが馬のいななき的に聴こえてまっせ。バッキングが微妙に変わっていくの
も斬新ではあります。

2曲目は「Blues In Orbit」で、鬼才というか変なオッサンのジョージ・ラッセル作になります。テーマにして案外にフリーな
アプローチで、それが終わるやいなやデヴィッド・サンボーンのシャープなソロが聴こえます。ボケた演奏だけではなく、こ
んな演奏もできるサンボーン君でした。その後はビリー・ハーパーのドキドキソロが続きます。ハーパーはいいプレイヤー
だと思っていたんですけど、最近は全然聞きませんね、どこでナニをしているやら…。最後までところどころにチューバが
聴こえて、エー感じでした。ギルのオッサン、エー歳こいてよーやりますな、前衛的アプローチに脱帽です。

3曲目の「Eleven」は、あっという間に終わる不思議な曲ですが、マイルスとの共作ということで捨てることのできないチュ
ーンなんだろうなと思います。後年にジャコがこの曲を採り上げていましたから耳にした人も多いのではないでしょうか。
そういえば、ワード・オブ・マウスなどのアプローチと似てますね。

B面の1曲目は「Cry Of Hunger」です。ビリー・ハーパーの曲で、「渇望の涙」などと訳されるようです。当たり前にハーパ
ーが頑張ったところを聴かせてくれます。コルトレーンの洗礼を受けるとこういうプレイになるんだよとでも言いたげな、然も
ありなんの演奏で、半分以上が彼のソロで埋められてます。出だしのアヴァンギャルドっぽいアンサンブルも、らしくてい
いんですが、途中で聴こえているフルートみたいなピーヒャラは何なんでしょう。

2曲目は「Summertime」、ご存知のスタンダードです。その昔、「ポーギーとベス」でマイルスと組んで演ってましたね。か
つてはマイルスのミュートがフィーチュアされてたんですが、ここではテッド・ダンバーのギターを採り上げています。まず
まず変態っぽくて聴き応えがあると言えますか…。最後の曲は「Zee Zee」で、これだけライブ演奏のようです。マーヴィ
ン・ピーターソンのトランペットが印象的で、マイルスかと思わせるようなアプローチもあり、彼も中々の芸達者でした。ハン
ニバルと言えば、例の「ハンニバル」をついつい思い出しますが、彼へのニックネームの方が先だったようですね、○○さ
ん。どうにもおどろおどろしいバッキングに合わせて、ハンニバルが咆哮しています。ほんでもって、このタイトルなんです
が、ナニを意味しているのか実はよく分かりませんでした。

長々と綴ってしまいましたが、これは名盤の一つですね。魔術師「スヴェンガリ」の圧倒的演奏はいかがでしょう?

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