のとnoノート - JAZZ(ジャズ)レコード評 -
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ケニー・ドーハム(KENNY DORHAM)
「メモリアル・アルバム」(MEMORIAL ALBUM)
ケニー・ドーハム(KENNY DORHAM)の「メモリアル・アルバム」(MEMORIAL 
ALBUM)です。
XANADUのオリジナル盤かと思いきや、その後LAのCREAMレーベルから
リリースされた復刻オリジナルでした。
レコード番号は、そのまんまXANADU125、モノラルです。大体XANADUの
リイシュー・シリーズ自体が生粋のオリジナルではありませんし、おまけにCR
EAMだということで、要はマイナーレーベルによる復刻盤です。
元々は「JARO」という幻のレーベルとされるところから「THE ARRIVAL OF KENNY DORHAM」としてリリースされたそう
で、確かにレーベルの「JARO」は、あまり聞きませんね。テレビで「JAROって何じゃろ〜♪」というフレーズなら聞いたこ
とがありますが、それとは別物のようです。

このレコードは1960年に録音されたもので、ドーハムとしては正に絶頂期に当たりますか。レーベルのメジャーさから
「QUIET KENNY」や「CAFE BOHEMIA」が有名なドーハムですが、実はそれらに優るとも劣らない、すなわち優るレコード
がこれでした。

大体「QUIET KENNY」なんてアルバムを出したもんで、ケニーは静かなオッサンなのかと勘違いする人が多いそうです。
さにあらず、静かどころか結構ハードな演奏が身上のケニーでした。身上と言えば、元日本ハム(もしくは元メッツ、あるい
は元阪神)の新庄はどうしてるんでしょう?一説によると現役復帰するんじゃないかといったデマも耳にしますね…。

閑話休題。JARO自体が幻のレーベルで、折角復刻したXANADUも今となっては知らない人のほうが多いような現状で
すが、このXANADUのゴールド・シリーズは良心的な復刻で一時は持て囃されたものでした。ただジャケットデザインを
強引にゴールド化したので、嫌っている人も居られるようです。

ゴールド・シリーズはモノラルの仕様が大半で、これも例に違わずモノラルなんですが、音質は中々に重心の低い傾向で
聴かせてくれます。下手にステレオにして薄っぺらになったものとはちょいと違います。

さてパーソネルは、トランペットにケニー・ドーハム、バリトン・サックスにチャールズ・デイヴィス、ピアノにトミー・フラナガ
ン、ベースにブッチ・ウォーレン、ドラムスにバディ・エンロウというクインテット構成です。チャールズ・デイヴィスって、どこ
かで聞いたような名前ですが、どこにでもある名前と言えばその通りで、結局はチャールズ・ミンガスやチャールズ・ロイド
とマイルス・デイヴィスやリチャード・デイヴィスなんぞをゴッチャにしていたわけで、実はよく知りませんでした。なんのこっ
ちゃ。

収録曲は、A面に「Stage West」、「I'm An Old Cowhand」、「Songs Of Delilah」、「Butch's Blues」の4曲、B面に「Stella
By Starlight」、「Lazy Afternoon」、「Turbo」、「When Sunny Gets Blue」、「Six Bits」の5曲、計9曲です。

1曲目の「Stage West」はドーハムのオリジナルです。バップのようなファンキーなような、案外に複雑なテーマでヨガラセ
ます。万人受けを狙ったものではなくて、これが分かればツーでカーよといった風情を思わせる名演でした。分かったよう
な顔をするには持って来いの曲じゃないでしょうか。急速調のバリバリで、この1曲で買って良かったなと思わせてくれま
す。ただ、このテンポにバリトンは少々荷が重そうではあります、ホガホガいってますね。

2曲目は、ご存知「おいらは老カウボーイ」でして、誰がこんな間の抜けたアホたれ邦題を付けたのか知りませんが、大し
たもので尊敬に値します。何といってもロリンズの名演が有名ですが、チャカポコしたシェリー・マンのイントロ(ココチチ、コ
コチチ、ココチチ、ドンとも言いますが、「ここ乳」とはこれ如何に…)とはうって変わったトミ・フラの、顔に似合わない優しげ
なイントロで始まります。その後は「へたれ」を意識したかのようなドーハムのソロが効いてます。邦題に合わせたわけで
はないでしょうが、トボケタ表情が何とも言えませんね。ボケのふりをするのは簡単なような難しいような、判断に苦しみ
ます。

3曲目は「デライラの唄」、サムソンとデリラでしたっけね、出典は。ムードミュージックと間違いそうなトミ・フラのイントロが
笑かします。続くミュートがまたボケまくりで、オマケの(?)バリトンもつられてボケてますね。

4曲目はブッチ・ウォーレンのオリジナルかと思いきや、そうではなくてドーハムのオリジナルなのでした。全編に渡ってウ
ォーレンのソロをフィーチュアしてますから、後から「ブッチのブルース」と名付けたのかもしれません。ファンキー色をやや
濃い目に表現したこれは楽しめます。と思っていたら意外にもすぐに終わっていました、残念。

B面の1曲目は、ご存知「星影のステラ」です。マイルスの演奏が有名ですが、ここでのドーハムも何匹目かのドジョウを
狙ったミュートです。ほとんどマイルスじゃないの、と言うべからず。大体がミュートを使うとマイルス似になってしまうのが
世の常なのでした、マイルスはやっぱりエライんですね。と思っていたら、途中からテンポアップして、仕掛けの妙を感じさ
せてくれるヒネリのアレンジでした。少しは考えてるんだドーハムも(ボケ顔でも)。その後のバリトンがまたしてもボケ味
たっぷりに聴かせてくれます。ちなみに日本で有名な「星影のワルツ」とは別物ですからお間違いなきよう。そういえば
久々に千昌夫がNHKに出ていましたね、普段は何してるんでしょうね。「オラ、金持ってるぞ!」、懐かしいフレーズでは
あります。

次は「Lazy Afternoon」で、確かに午後は眠くてサボりたくなりますね。調子に乗ってランチを食べ過ぎたりすると、苦しい
のと眠いのとで昼寝を貪りたくなるのが人情でして、私もよくします。という雰囲気にピッタリなディープな名演です。どこま
で落ちていくのか分からないような、放っておくと蘇れないヨミの国…、てなもんですか。このまま起き上がれなかったらど
うしよう。

さて、お次は「Turbo」で、一転して陽気な雰囲気で盛り上げてくれます。結構アルバム構成も考えてるんじゃないの、ド
ーハムさんよ。TURBOと言えば、どうしてもクルマのターボですね。ブルーバードのターボが出たときは羨望の的で、そ
の後のドッカン・ターボには若気の至りで憧れました。何せホントに背中がシートの背もたれに押し付けられるんですか
ら、あの感触は堪えられませんね。一番凄かったのはランタボ(ランエボともいう)でした。曲自体は際立った抑揚もなく終
わりますので、ナニがターボなのかよく分かりません。作者がDavisとありますから、バリトン吹きのデイヴィスさんなので
しょう、やっぱりよく分からない存在でした。

続く4曲目は、ドーハムではなくて、よく分からなかったデイヴィスさんをフィーチュアしたナンバーです。このくらいの調子
だといい感じに聴こえるデイヴィスさんでした。

最後は「Six Bits」です。8ビットとか16ビットは聞いたことありますが、6ビットは知りませんね。作者を見てもマニー・アル
バム?、誰だそりゃ、といった感じで、よく分かりません。しかも「Album」ではなくて「Albam」ですから尚更分かりません
ね。ジャケット裏のライナーにも表記がなく、ますます謎な1曲でした。曲自体はファンキーなイメージで、普通に聴かせて
くれますから、詮索は止めておきましょう。

というわけで、幻の名盤化していたこのアルバムですが、蘇らせてくれたドン・シュリッテンに感謝すべきものがある名盤
じゃないかと思っています。

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ケニー・バレル(KENNY BURRELL)、ジミー・スミス(JIMMY SMITH)
「ブルー・バッシュ!」(BLUE BASH!)
ケニー・バレル(KENNY BURRELL)、ジミー・スミス(JIMMY SMITH)の「ブル
ー・バッシュ!」(BLUE BASH!)です。
VERVEのオリジナル盤、モノラル仕様になります。
レコード番号はV/V6−8553。
このレコードは1963年の7月に収録されたもので、収録日が3回に分かれていますので、パーソネルにも変化がありま
す。ギターにケニー・バレル、オルガンにジミー・スミスは不動なのですが、その他ベースにミルト・ヒントン、ジョージ・デュ
ヴィヴィエ、ドラムスにメル・ルイス、ビル・イングリッシュ、オマケのギターにヴィンス・ギャンバレというようなメンバーにな
ります。

収録曲は、A面に「Blue Bash」、「Travelin'」、「Fever」の3曲、B面に「Blues For Del」、「Easy Living」、「Soft Winds」、
「Kenny's Sound」の4曲、計7曲です。

こういう組み合わせは、大体聴く前から内容が想像されて楽しくなります。バレルのギターがスミスのオルガンに触発さ
れて、より一層バリバリになるのが手に取るように分かるんじゃないですか?

アルバム・タイトル曲の「Blue Bash」は、そのまま訳せば「青い一発」とか「ブルーな一発」とかいう感じで、とにかく強烈
な一発を決めるわけで、なるほど効くのは効くんですが、やや抑え目に聴こえてしまうのも初顔合わせのご愛嬌ということ
で…。ジャケットの写真まで青くて、何やってるんだか、そのまんまです。

実は1曲目よりも2曲目の方が「キツーイ一発」をかましてくれます。1曲目の録音からほぼ10日後の録音になり、コラボ
にも慣れたところを聴かせているんでしょうか。2曲目のノリノリと3曲目のリラックス・ムードが何とも言えません。ミルトの
ステディなベースも控え目ながら聴きものです。こういうおっさんのベースは味があっていいもんですね。

ジョージ・デュヴィヴィエが参加しているのが、B面の冒頭から3曲で、堅実で強靭なベースワークを聴かせてくれます。特
にB面2曲目の「Easy Living」はジミー・スミスが抜けたトリオでの演奏で、実に雰囲気のあるプレイが聴けます。メル・ル
イスのブラッシュ・ワークが中々絶妙ですよ。

最初と最後の2曲がヴィンス・ギャンバレの加わったメンバーによる演奏で、ベースラインをギャンバレが受け持っていま
すね。名前のごとく結構ガンバッテいるように聴こえるんですが、いかがでしょうか。

ミルト・ヒントンもジョージ・デュヴィヴィエも似たような名手かと思いますが、ここではジョージの方が良さそうな感じです。
ミルトの音は若干薄めに聴こえるんですが、ドラムスの影響なんでしょうか?

いずれにしても、全編ブルージーな演奏で、バレルの特質は余すところなく現れており、ジミーのオルガンが強烈なスィン
グ感を醸し出しています。要はオルガンのアーシーな音色を加味したノリノリの演奏かと思います。

私はたまたまバレルが好きなもので、彼の演奏なら何でもOKなんですが、ここでのバレルは通常以上にアグレッシヴな
プレイになっています。正に触発されて何とやらの実例そのものでした。やりすぎるのも結構いいものです。イェーイ!と
いうことで…。

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ケニー・バレル(KENNY BURRELL)
「マン・アット・ワーク」(MAN AT WORK)
ケニー・バレル(KENNY BURRELL)の「マン・アット・ワーク」(MAN AT WORK)
です。
CADETのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。レコード番号はLPS−76
9。とは言うものの、実は既にARGOからリリースされていた「A NIGHT AT 
THE VANGUARD」のCADETによるリイシュー盤です。
一応CADETではオリジナルになるようなので、何とも表現に苦しむ盤ではあ
ります。
このレコードは1959年にニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードでライブ収録されたものです。「NYでのライブなのに、何
でシカゴのレーベルなんだ」と野暮は言いっこなしです。バレルにあやかってNYに来たかったんじゃないですか、CHES
S(すなわちARGOでCADET)の面々も。

パーソネルはギターにケニー・バレル、ベースにリチャード・デイヴィス、ドラムスにロイ・ヘインズというトリオです。

収録曲は、A面に「All Night Long」、「Will You Still Be Mine」、「I'm A Fool To Want You」、「Trio」の4曲、B面に
「Broadway」、「Soft Winds」、「Just A-sittin' And A-rockin'」、「Well, You Needn't」の4曲、計8曲です。「Soft Winds」
はバレルのお気に入りみたいですね。どこかでも見掛けたことがあります。

こういう組み合わせの場合は、バレル節が横溢するような感じですね。ベースもドラムスもそれぞれが達人で、誰にでも
合わせられるヴァーサタイルなプレイヤーですから、バレルの特色を打ち消すことなくバッキングするはずです。

で、結果は大体そのとおり。ロイ・ヘインズのドラムスが必要以上に大きく聴こえる箇所はありますが、それはそれで快適
に聴こえますから、やっぱりロイは只者ではないのでした。この人はホンマに凄いと思います、今更ながら。リチャード・デ
イヴィスも堅実かつ強靭、ぶれないバックアップで盛り立てています。後年の見るも無残な姿は、この頃からは想像でき
ません。

アルバム・タイトルが泣かせますし、ジャケットを飾る「仕事中の人」って立て看板がイナセじゃあーりませんか。このジャ
ケットだけで私は買いでした。ドン・ブロンスタインとかいう人の写真だそうですが、こういうのが好きですね、私は。ARG
Oのは若いバレルがギターを持って写っているだけのツマンナイものでしたから、ジャケットで言うなら断然こっちです。

さて、1曲目は「All Night Long」です。プレスティッジに同名のアルバムがあり、バレルの代名詞みたいに扱われている
曲かもしれません。一晩中ナニをやっていたのかは知りませんが、けだるいようでウキウキの雰囲気が堪りませんね。ま
あ事後は充足感でこんなものなのでしょう…。シングル・ラインとコードのバランスが絶妙です。黙って聴けば、ピタリと分
かるの典型ですから、聴いてみてください。

2曲目は「Will You Still Be Mine」。作者はマット・デニスですね。「マットでニス」とか「マットで西」じゃありませんので、お
間違いなきよう。レッド・ガーランドの超有名盤「グルーヴィー」に入っていますから、皆さんよくご存知のアノ曲です。軽快
なタッチでブリブリ迫ります。ロイ・ヘインズが抜群のバッキングです。原曲は曲中にいろんな固有名詞(つまりは人の名
前)が出てくる面白い曲です。かの、マリリン・モンローの名前も出てきて「胸の小さい太ったオバサンでも…」なんていう
歌詞があるそうです。なーんだ、要するに「私がおばさんになっても」のリメイクなんですか、って逆だろ! でも森高千里
は良かったですね、最後の正統派アイドルじゃないかと今も密かに慕っています。江口洋介と結婚して子供も儲けてしま
いました、くそーっ、残念!

3曲目が「I'm A Fool To Want You」で、翻訳ソフトでは「私はあなたが欲しい馬鹿です」になるんですが、歌詞を見てた
ら、やっぱり馬鹿者かと思わないでもありません。どうもシナトラが作詞したものにプロがちょいと手を加えたという出自の
ようです。男性でも女性でもどちらでも歌えるような内容ですけど、どっちかというと女性が歌った方が合うかもしれませ
ん。要するに、「手に負えない異性(いわゆるプレイ・ボーイかガールか)を好きになって、何度も別れようとして、実際別れ
たんだけど、やっぱりアノ人が忘れられない。ああ、アナタなしにはいられない」という、よくあるアンポンタンの歌ですね。
何でもシナトラが1951年にこれを歌ったときは、離婚の後にエヴァ・ガードナーと結婚した頃だそうで、自分の境遇を歌っ
てたんですね。バレルの演奏は、ギターであたかもその詩を歌っているかのように聴こえます。欲目かもしれませんが、ラ
イブでの雰囲気がそれをさらに助長して、傑作バラードになりました。

4曲目は「Trio」です。エロル・ガーナーの作になる快活な曲で、彼の作は「Misty」だけではなかったのでした。前曲とは
うって変わった明るいプレイです。ここでもコードとシングル・トーンのバランスが見事で、こんな演奏もできるんだよとでも
言いたげなプレイが必聴でしょう。ヘインズのドラムがやっぱり大きいかなあ?

B面に移って1曲目が「Broadway」です。作者がBird, Woode, McRaeとありますから、パーカーとジミー・ウッドとカーメン・
マクレーの共作かと思いきや、全然違う人でした。ビル・バード、テディ・マクレー、ヘンリー・ウッドという人たちです。一応
スタンダードになってますね。バップのノリでいてメロディアスに展開するバレルは快感です。後半のバレルとヘインズの
交換では、ヘインズの無造作のようでいて的確な応答に痺れますよ。

2曲目は「Soft Winds」で、ご存知ベニー・グッドマンの作です。その昔、グッドマンはハンプトンやチャーリー・クリスチャン
を加えたセクステットで初演してます。すべてのギタリストにとってクリスチャンは尊敬に値する存在ですから、バレルも敬
意を表して採り上げたんでしょうか。あっという間にブラシとスティックを持ち替えるヘインズは手品師かいな…。

3曲目は「Just A-sittin' And A-rockin'」といいます。エリントンとビリー・ストレイホーンの作で、ちょうど座ると揺れるんで
しょうか? よく分かりませんが、バレルはエリントンが好きなんですね、そんな敬愛の感じられる演奏でした。

最後の曲が「Well, You Needn't」で、これも有名曲の一つですね。お馴染みのセロニアス・モンクによる作曲です。モンク
のトリオ・アルバムでも聴けますが、ここでのバレルはモンク風どっぷりではなくて、やっぱり多少はメロディアスに演奏し
てます。余計なことは「しなくていいよ」ってなもんですかね。

全編に渡って、バレルのレロレロ・トーンが快調です。専門的な用語では他の表現も可能でしょうが、私は専門ではあり
ませんので、こんな表現でご勘弁を。生硬でハードなバレルがレレレレー、ローンローンと聴こえるのは私だけでしょうか
…。

私はたまたまバレルが好きなもので、彼の演奏なら何でもOKなんですが、ここでのバレルは生真面目な中に太目のトー
ンでグイグイ迫ります。BNの有名盤に劣らぬ演奏だと勝手に思っています。さっきも書きましたが、ドラムスの音がやや
大き目に聴こえるところが気にならなくもないのですが、ライブだから仕方がないと言えばそれまでです。でも、収録する
席が悪かったんじゃないの、と突っ込みたくなる録音ではありました。暴言多謝。

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ケニー・バレル(KENNY BURRELL)
「ムーン・アンド・サンド」(MOON AND SAND)
ケニー・バレル(KENNY BURRELL)の「ムーン・アンド・サンド」(MOON AND 
SAND)です。
CONCORDのオリジナル盤になります。
パーソネルは、ギターにケニー・バレル、ベースにジョン・ハード、ドラムスにロイ・マッカーディ、パーカッションにケンネス・
ナッシュという顔ぶれで、ブルージーな演奏に好適な人選と言えます。

ケニー・バレルといえば、一連のブルーノートやプレスティッジ、ヴァーブでの作品が有名ですが、それらは大体1960年
代までのことで、1970年以降はミューズやコンコード、ファンタジーに快調な作品を残しています。

このレコードは1980年に録音されたもので、コンコードのレーベル・イメージ(そんなものあるのか?)に合った控えめな
がら充実した演奏を聴かせてくれます。

アルバム・タイトルにもなっている1曲目の「ムーン・アンド・サンド」は、かつてギル・エバンスのアレンジで録音された「ギ
ター・フォームズ」からの再演になります。比べるのもバカらしいほどの編成差ですが、聴き比べてみるのも一興ではあり
ます。

曲目中の白眉はB面の「ストールン・モーメンツ」かもしれません。この曲はオリバー・ネルソンの作曲になる佳曲で、邦題
「ブルースの真実」に収録されています。オリジナルではセクステット程度での演奏で、元々どこかミステリアスな原曲で
す。ここでは、殆どバレルとジョン・ハードのデュエットのようで、さらに渋く都会の退廃を加えたかのごとき演奏です。こい
つは必聴です。

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ゲイリー・バートン、キース・ジャレット(GARY BURTON, KEITH
JARRETT)
「ゲイリー・バートン & キース・ジャレット」(GARY BURTON &
KEITH JARRETT)
ゲイリー・バートン、キース・ジャレット(GARY BURTON, KEITH JARRETT)の
「ゲイリー・バートン & キース・ジャレット」(GARY BURTON & KEITH 
JARRETT)です。
ATLANTICのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。
レコード番号は、SD−1577。
このレコードは、1971年にニューヨークで録音されリリースされたもので、正にキース・ジャレットが日本でブレイクする直
前を捕らえた貴重な時期の記録になりますね。

パーソネルは、ヴァイブにゲイリー・バートン、ピアノとソプラノサックスにキース・ジャレット、ギターにサム・ブラウン、ベー
スにスティーブ・スワロー、ドラムスにビル・グッドウィンというクァルテット構成です。

収録曲は、A面に「Grow Your Own」、「Moonchild In Your Quiet Place」、「Como En Vietnam」の3曲、B面に
「Fortune Smiles」、「The Raven Speaks」の2曲、計5曲になります。この内、A面の3曲目「Como En Vietnam」だけス
ティーブ・スワローの作になるもので、他の4曲は全てキースのオリジナルという記載があります。

時期的にはゲイリー・バートンの方が有名で、既に「葬送」なんていうアルバムでそれなりの名声を博していましたから、
当初キースはタイトルには出てくるもののサイドメンの一人という扱いだったんだろうと想像されます。しかし、内容はキー
スの方が目立ってるかもしれません。ほとんどの作曲を手掛けていることからも明らかなように、キースのアルバムと解
釈しても当たらずとも遠からずでしょう。

さて、A面の1曲目は「Grow Your Own」です。自分で育てようみたいな意味なんでしょうが、翻訳ソフト(最近、これに凝っ
てます、ケッサク和訳が見られますから)によりますと「自分のものを栽培してください」だそうです。一体自分のナニを栽
培するのか興味が湧きますね、流石は翻訳ソフトです。演奏は昔のキース(Somewhere Beforeなんかね)を髣髴とさせ
るような感じで、エキセントリックなギターがイー感じです。70年頃を感じさせるジャズには違いありませんから、結構楽し
めます。

2曲目は「Moonchild In Your Quiet Place」です。「あなたの静かなところの蟹座生まれ」(翻訳ソフト)。案外にこれが、
実は一番受けそうな曲かもしれません。バートンのヴァイブが綺麗に響いて、キースやその他の連中はバッキングに徹し
ているのか、と思いきや途中からキースが後の活躍を窺わせるようなソロを展開します。といってもジャズか何か分からな
いような出来ではなくて、しっかりジャズしてるのが笑わせます。

3曲目が「Como En Vietnam」です。これのみスティーブ・スワローの作ですけど、ギターの響きが私には快感でして、ソ
ニー・シャーロックとまでは至らないにしても、中々飛んでて、イーじゃないのオッサンよ。誰だったっけギタリストは? サ
ム・ブラウンですね。意外と保守的なグループにも居たそうですが、結局は1978年に39歳でお亡くなりになりました。ヤ
ク漬けだったんでしょうかね、惜しいです。

B面に移って、1曲目が「Fortune Smiles」です。フォーチュンといってもソニー・フォーチュンが微笑んでいるわけではなく
て、「幸せの微笑」てな感じですか? バートンの幸せそうなソロが続き、受けたキースも嬉しそうですね、ホンマかいな?
 実は全くのフリーに変貌して驚かせつつ微笑ませてくれます。その後はやっぱりのホンワカムードで締めくくります。

2曲目が「The Raven Speaks」で、これで最後です。「からす座は話します」だってよ、何なんだそりゃ。のっけからギター
の響きがイカシテまして、このまま行くんかいなと思いきや、そうでもない展開でした。ハービー・マンほど寛容ではない
のね、バートンは。60年代後半からのジャズによくある展開で、それはそれなりに安心して聴けます。と思っていたら、途
中で渋いギターが現れまして暫くはギョイーン、ウィーンとさらけ出してくれました。続くのがキースのソロで、ウーム極め
て普通で面白くないと感じないではありません。いい子ぶっていたんでしょうね、きっと。その後、バートンが登場してハッ
ピーに終わりそうなんですが、最後にソプラノ・サックスでキースが決めているようなエンディングでした。で、おしまい。

この頃キースは、かのマイルス・デイヴィスのグループにも在籍しつつトリオやアメリカン・クァルテットなどのグループでも
アルバムをリリースしていました。あの「Facing You」がリリースされるのはこのアルバムの翌年です。大体、「Facing
You」が出ても、当時はチック・コリアがRTFやソロで勇名を馳せていましたから、いまいち日本では受けが悪かったです
ね。そんな頃、かのSJ誌のインタビューで秋吉敏子さんが「キースの方がチックよりも数段上のピアニストよ」と述べてい
たのを思い出します。別に秋吉敏子さんの言だから信用するべしとは言いませんが、アメリカのジャズ・シーンを直接見て
いてついつい言葉にしたんだろうと思います。同じ頃、私は秋吉敏子さんより秋吉久美子さんに興味がありましたね…。

1973年から1975年で、あの有名な「Solo Concert」や「Koln Concert」をリリースし、「ソロピアノのキース」を確立して
しまいます。もちろん、アメリカン・クァルテットやヨーロピアン・クァルテットでも活躍しますが、もっぱら「ソロのキース」が巷
間話題になる筆頭でした。

このアルバムでのキースは、アメリカン・クァルテットほど尖鋭的ではなく、一応リーダーのバートンに敬意を表しつつプレ
イしたような感じです。それでも内容のほとんどを自作で埋めて、ヤル気は十分だったようです。

一方のバートンですが、このアルバムをリリースした同年に「Alone At Last」を録音しており、これはグラミー賞を貰うほど
の話題作でした。日本でもそれなりに評価された名盤だったようで、一時は私も探したものです。さらに、この翌年に彼は
チック・コリアと「Crystal Silence」を録音し、その後もチックとのデュエットは永年に渡って続きます。スイスでのライブ盤
などは未だに私の愛聴盤なのでした。彼にとってはキースよりチックの方が相性が良かったんでしょうかね。オトコの世界
には常人には分からないことも多いようですな。

というわけで、この頃に絶頂だったのはもちろんバートンの方で、キースはマイルス・グループに片足突っ込んだ、やや中
途半端な状態だったことは疑いありません。

で、ジャケットを眺めてみますと、何だかキースの方がエラそうではあります。バートンが大人しめに腰掛けている丸太に
片足を掛け、自信たっぷりにあらぬ方向を眺めているショットは中々に笑かしてくれます。裸足にサンダルを引っ掛け、ラ
ンニング(タンクトップともいう)から結構マッチョな両腕を露出し、アフロヘアーのキースが存在感たっぷりですね。片やバ
ートンは内股にはなっていないものの行儀よく丸太に腰掛けてカメラの方を見つめていますが、シャツとベストの組み合わ
せもあって、どことなくひ弱な感じを醸し出しており、ジャズ界の「みなみらんぼう」を見事に演出しています。皮肉っぽく見
るつもりはないにしても、そんな風に見えてしまう好ショットですね!

いずれにしても、マイルスの影響もあったのか、ロックやアメリカン・ポップスを上手く消化したようなキースのプレイが目立
っちゃう好盤です。全体として初期のジャズ・ロック(フュージョンともいう)を現出していますから、この辺の音楽がお好き
な御仁には堪らない1枚でしょう。私もその一人です。

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