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オーネット・コールマン(ORNETTE COLEMAN)
「ディス・イズ・アワ・ミュージック」(THIS IS OUR MUSIC) |
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オーネット・コールマン(ORNETTE COLEMAN)の「ディス・イズ・アワ・ミュージ
ック」(THIS IS OUR MUSIC)です。
ATLANTIC原盤のRHINOによる復刻で、180グラムの重量盤になります。 |
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RHINOによるリリースはかなり良心的な内容で有名で、こういうパッケージングは日本ではあまり考えられません。RHI
NOはジャンルに拘らず名盤を復刻しているレーベルで、これもATLANTICのアンダー・ライセンスで復刻されたもので
す。CD6枚組みボックスセットで、オーネットのATLANTICコンプリートをリリースしたのもこのRHINOで、中々ユーザー
にとっては有り難いレーベルかと思います。
パーソネルは、アルトサックスにオーネット・コールマン、ポケットトランペットにドン・チェリー、ベースにチャーリー・ヘイデ
ン、ドラムスにエド・ブラックウェルという1960年代初期におけるクァルテット編成です。ドラムスがビリー・ヒギンズからエ
ド・ブラックウェルに代わった最初のレコードです。
このレコードは、1960年に録音され1961年にリリースされた、ATLANTICにおけるオーネットの3作目に当たり、前作
「CHANGES OF THE CENTURY」のジャケット写真では未だやや不安げな表情を見せていたオーネットが、このレコードで
はタイトルからして「THIS IS OUR MUSIC」というように、またジャケット写真の表情からも相当の自信を持って送り出した
アルバムかと思われます。
このすぐ後のアルバムが、巷の評価が高い「FREE JAZZ」ですが、このレコーディングとの録音間隔は4ヶ月ほどに過ぎ
ません。1960年当時のオーネット・ミュージックにおけるエッセンスたるべき演奏でしょう。既成のジャズに挑戦しようと
するヤル気が感じられます。
上記CDボックスのネーミングが「BEAUTY IS A RARE THING」なんですが、このタイトルはこのレコードに収録された1曲
の曲名を踏襲しています。この事実からもおそらくは彼のFINESTと解釈されます。
また、収録曲に「EMBRACEABLE YOU」が含まれているのも注目されるところで、この古典をどう料理しているのか、聴い
てみる価値もありそうです。
いずれにせよ、オーネットにとっては伝説のクァルテットにおける最良が記録されていますので、今まで興味のなかった方
にもお薦めできる1枚かと思います。
私は、このCDボックスも持っておりますが、そのブックレットの中にこのジャケット写真と同時期の写真が収められていま
す。それぞれ自信に満ちた表情で、この頃が如何に充実していたかを彷彿とさせます。
ただ一人、エド・ブラックウェルだけは呆けた表情であらぬ方向を見つめてニヤニヤしており、少々頭のオカシイ時期だっ
たのかもしれません。ビリー・ヒギンズよりは土人に近いフィーリングを持っていますから、この頃のオーネットには欠くべ
からざる存在だったのでしょうか…。 |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)
「イン・ア・ロマンティック・ムード」(IN A ROMANTIC MOOD) |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)の「イン・ア・ロマンティック・ムー
ド」(IN A ROMANTIC MOOD)です。
VERVEのオリジナル盤、モノラル仕様になります。
レコード番号はMGV−2002。 |
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パーソネルはピアノにオスカー・ピーターソン、ギターにハーブ・エリス、ベースにレイ・ブラウン、その他ストリングスになり
ます。サブタイトルが「OSCAR PETERSON WITH STRINGS」ですから、そのまんまですね。ただ、ギターとベースが本当
にこのメンバーで吹き込まれたのかどうかは他にも説があるようですので、よく分かりません。
このレコードは1955年の12月30日にCAのLAで録音されたもので、ピーターソンのピアノにストリングスを引っ付けた
企画物といえば、理解は早いかと思います。しかし、ストリングスを引っ付けてもらって初めて一流のジャズ・ミュージシャ
ンという理屈もあるそうですから、既にピーターソンは巨匠の域に達していたのかもしれません。まだ30歳なのにねえ
…。
収録曲は、A面に「RUBY」、「STARS FELL ON ALABAMA」、「BLACK COFFEE」、「LAURA」、「THE BOY NEXT
DOOR」、「OUR WALTZ」の6曲、B面に「TENDERLY」、「I THOUGHT ABOUT YOU」、「I ONLY HAVE EYES FOR YOU」、
「STELLA BY STARLIGHT」、「A SUNDAY KIND OF LOVE」、「IT COULD HAPPEN TO YOU」の6曲、計12曲です。
ストリングス・セクションのアレンジと指揮はラッセル・ガルシアとかいうラテンっぽい名前の兄ちゃんです。裏面のノートに
は「the brilliant young West Coast arranger」とあります。が、ガルシアは1916年生まれですから、この録音時には40
歳直前になり、決して「ヤング」とは言えないと思うのですが、これ如何に。
ガルシアは、1950年代前半にユニバーサルの専属になったらしく、15年間の間に「hundred of」とも言われる映画音楽
に携わった売れっ子だったようです。そういう人がピーターソンのレコーディングに付き合うのですから、アメリカでは然もあ
りなんでしょうか。
VERVEの2000番台というのは「Popular 2000 series」とも呼ばれているみたいで、熱血真摯なジャズからはちょいと距
離を置いたシリーズかもしれません。で、ストリングス付きというのでは余りにも安易ではあります。しかし、2000番台を
紐解いてみますと、殆んどが有名なジャズ・ミュージシャンで占められており、グランツの趣味が丸出しです。
それに、ピーターソンのソングブック・シリーズもこの中に含まれていますから、ポピュラー路線狙いだったとは言え、結果
としたら出来のよいジャズを多く提供してくれたように思います。面白そうなところでは、テディ・ウィルソン、スリム・ゲイラ
ード、アーティ・ショウ、カウント・ベイシー、ハリー・カーネイ、ジョージ・ウォリントン、ベニー・カーター、ウディー・ハーマン
などが並んでおり、女性ものでは、アニタ・オデイ、ジェーン・パウエル、ブロッサム・ディアリー、バーバラ・キャロル、モニ
カ・ルイス、ヘレン・グレイコなんぞがリリースしています。グランツの嗜好が何となく分かりそうなラインアップですね。ご
多分にもれず、グランツもスケベ親父だったようで微笑ましい限りです。
閑話休題。聴きようによっては、単なるムード・ミュージックもしくはイージー・リスニングと解釈するのが妥当なようにも思
えます。とは言え、何せピーターソンですから趣きのある演奏を披露して和ませてくれますか…。
ジャケットの写真がイケテます。幾分色褪せたように見えますが、唇とネイルをパートカラーで表現してあり、こういうタッチ
が私は好きですねえ。ストレートな表現よりも感じさせてくれます。 |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)
「ウェスト・サイド・ストーリー」(WEST SIDE STORY) |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)の「ウェスト・サイド・ストーリー」
(WEST SIDE STORY)です。
VERVEのオリジナル盤と思われます。
レコード番号は、V6−8454。 |
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パーソネルは、ピアノにオスカー・ピーターソン、ベースにレイ・ブラウン、ドラムスにエド・シグペンという、ご存知黄金期の
トリオです。
このレコードは1962年の1月に録音されたもので、「My Fair Lady」の次に来るアルバムです。このアルバムからギター
が抜けてドラムスを入れたトリオになりました。
ジャケットの写真からも、安易にそれと分かる「ウェスト・サイド・ストーリー」から題材を得たアルバムです。こういうジャズ
化アルバムの場合は原曲の偉大さからか、あらぬ方向へ舵を取ってしまう凡作が多いのが通例かと思いますが、これは
そういった懸念を一気に払拭するが如きダイナミズムに溢れた好盤かと思います。
前に「My Fair Lady」をご紹介しましたが、あれも映画音楽に題材を求めていました。この時期のピーターソンは斯様な
方向性を善しとしていたのかもしれません。ノーマン・グランツの趣味かも…。
件の「My Fair Lady」も、同名アルバムにシェリー・マンのがありましたが、このアルバムもアンドレ・プレヴィンによる同
名アルバムがあります。メンバーも似たような感じで、プレヴィンのピアノ、マンのドラムスにレッド・ミッチェルのベースで
す。VERVEとCONTEMPORARYでお互いに向こうを張ったようなリリースをこの時期に為していたようで、ちょっと興味
が湧きます。
収録曲は、A面に「Something's Coming」、「Somewhere」、「Jet Song」、B面に「Tonight」、「Maria」、「I Feel Pretty」、
「Reprise」で、1曲目からビンビンに飛ばしています。レイ・ブラウンのベースがブンブンで、このアルバムから参加した
(はずの)エド・シグペンはピアノとベースの間を埋めるが如きサポートで、1960年代前半における「最強ピアノ・トリオ」
の片鱗を聴かせてくれます。
「Jet Song」などは、解釈が巧くて随分高級な曲に聴こえたりするのが不思議です。一般的な白眉は、B面の「Tonight」
だと思いますが、ここでのドライブ感には結構凄まじいものがあり、自然に体が動いてしまう「スィング」とはこういうものか
と再認識せざるを得ません。
そういったイケイケだけではないのがピーターソンの、やっぱり懐の深いところで、「Maria」などの端正で優しさを湛えたプ
レイも聴きものではあります。
レナード・バーンスタインによるスコアも素晴らしいのですが、奇しくもジャケット裏のライナーにはこんな記載がありまし
た。「This is the Trio making jazz, Listen.」 |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)
「エロクエンス」(ELOQUENCE) |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)の「エロクエンス」(ELOQUENCE)
です。
LIMELIGHTのオリジナル盤、モノラル(MONAURAL)仕様になります。
レコード番号はLM−82023。 |
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パーソネルはピアノにオスカー・ピーターソン、ベースにレイ・ブラウン、ドラムスにエド・シグペンという、お馴染みのピータ
ーソン・トリオです。
このアルバムは、1965年の5月29日にコペンハーゲンの「チヴォリ・ガーデン」でライブ録音されたもので、ピーターソ
ン・トリオ最盛期の録音に当たります。
収録曲は、A面に「Children's Tune」、「Younger Than Springtime」、「Misty」、「Django」の4曲、B面に「The
Smudge」、「Autumn Leaves」、「Moanin'」、「Lovers' Promenade」の4曲、計8曲です。
ピーターソンの作品中では、それほど持て囃されたアルバムではないようです。いわゆる快速調のバリバリ・スイングと
は一線を画したようなプレイで、遠くデンマークまで赴いた疲れなんでしょうかね? シングル・トーン中心の、どっちかとい
うとおとなしめな内容です。
とはいっても演奏が凡庸なわけはなく、それなりに楽しめてしまうところが、ピーターソン恐るべしなのでしょう。
ブリブリ・バキバキ・バコーンバコーンのピーターソンを期待なさる向きにはお薦めしませんが、シットリ・シンミリと満喫さ
れたい方には好適なアルバムです。 |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)
「プレイズ・ジョージ・ガーシュイン」(PLAYS GEORGE GERSHWIN) |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)の「プレイズ・ジョージ・ガーシュ
イン」(PLAYS GEORGE GERSHWIN)です。
MERCURYのオリジナル盤、もちろんモノラルです。
レコード番号はMGC−605。 |
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このレコードは1952年に録音され、1953年にリリースされたもので、実は「MERCURY」と「CLEF」の2レーベルで発
売されています。その当時から生きていたわけではないので、詳細を確実に確認したわけではありませんが、どうも「ME
RCURY」版の方が希少価値はありそうです。
何故かというと、プロデューサーのノーマン・グランツは1950年代初頭にマーキュリーから独立してクレフを興したという
ことで、丁度このレコードがリリースされた頃に符合します。クレフ発足当時に発売されたレコードには、左上に「CLEF」
のシールが貼ってあり、おそらくはそれを剥がすと「MERCURY」の文字が出てきます。ということは「CLEF」版よりも先
に「MERCURY」版があったということで、どうやら「MERCURY」版の方がオリジナルと呼ぶに相応しいような気がしま
す。
巷では「CLEF」版を尊ぶような風潮のようですが、母国アメリカでは「MERCURY」版は「CLEF」版の倍近い評価のよう
です。さらにディスコグラフィーを調べた限りでは、「MERCURY」版がメインで、「Also issued on CLEF MGC-605」とあり
ますから、やっぱり「MERCURY」が本家で「CLEF」が分家かなと思わせます。実際にグランツは「CLEF」を設立してか
ら自らプロデュースした「MERCURY」の作品を買い取ったそうですから、これが正解かなと自分では思っています。
パーソネルは、ピアノにオスカー・ピーターソン、ベースにレイ・ブラウン、ギターにバーニー・ケッセルという、ハーブ・エリ
スが入る前のトリオ編成です。
収録曲は、タイトル通りジョージ・ガーシュインの曲で、A面に「The Man I Love 」、「Fascinatin' Rhythm」、「It Ain't
Necessarily So」、「Somebody Loves Me」、「Strike Up the Band」、「I've Got a Crush on You」の6曲、B面に「I Was
Doin' Alright」、「'S Wonderful」、「Oh, Lady Be Good 」、「I Got Rhythm」、「A Foggy Day」、「Love Walked In」の6曲、
計12曲になります。
この後、トリオで楽旅に出る予定だったそうですが、バーニー・ケッセルがツアーを嫌がったために、ギターはハーブ・エリ
スに変わります。ですから、ケッセルとのトリオが聴ける盤としても貴重なものでしょう。
演奏内容は大体推して知るべしの範囲ではあり、毎度おなじみピーターソン節が楽しく聴けます。今はどうしておられる
か分からない粟村氏の指摘を待つべくもなく「超一流大衆演奏家」の面目躍如たるものがあり、聴いてて爽快です。
どうやらCDでの再発も見掛けませんので、ある意味稀少なオリジナル盤はいかがでしょうか? |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)
「マイ・フェア・レディ」(MY FAIR LADY) |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)の「マイ・フェア・レディ」(MY
FAIR LADY)です。
VERVEのオリジナル盤、ステレオ仕様になります。
レコード番号はMGVS-6060。 |
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パーソネルはピアノにオスカー・ピーターソン、ベースにレイ・ブラウン、ドラムスにジーン・ギャメイジというトリオで、ギター
レス・トリオに変わった頃のアルバムになり、この後すぐにドラムスはエド・シグペンに変わっていきます。
このレコードはミュージカル「マイ・フェア・レディ」のナンバーを収録した1958年の録音で、1959年にモノラル仕様が、1
960年に本ステレオ仕様がリリースされています。ステレオ盤としてはこれがオリジナルになります。
上記のようにギターレス・トリオ黎明期のアルバムに当たり、全体的にはそれほどはハデ過ぎない演奏具合です。
とは言え、オスカー・ピーターソンのピアノは流石に普通ではありません。強烈なドライブ感とスイング感で有名な彼です
が、その反面リリカルな表現もそこいらのピアニストでは足下にも及びません。
些か饒舌に過ぎる嫌いがともすれば指摘される彼の演奏ですが(その辺をサービスと割り切ってしまえば)、その演奏技
術や歌心には平伏す術しか知りません。単にテクニックのひけらかしに終わっていないところが彼をして一流と言わしめ
る根拠の一つでしょう。
また、このアルバムでは題材をミュージカルに求めたからか、想像以上に抑制も効いた好演になっていると思います。
「マイ・フェア・レディ」のジャズアルバムとしては、片やシェリー・マンのが有名ですが、ご存知のようにシェリー・マンはウ
ェスト・コーストであり、サイドメンもピアノにアンドレ・プレヴィン、ベースにリロイ・ヴィネガーというウェストの人材を配して
います。これはこれである種快適な演奏ゆえに愛聴盤の一つになりうる名盤です。ピーターソンのアプローチはそれと比
べればやはり黒さが際立ってきます。
私は白人系やウェスト系も嫌いではないので、何が何でも黒ければいいというようなことは申しませんが、粘度と閃きを併
せ持ったピーターソンの演奏に曰く捨て難い魅力を感じることも事実です。
シェリー・マンのアルバムが1956年の録音であることを思えば、ピーターソンのそれは二匹目のドジョウという謗りを免
れないところですが、そういう野暮はさて置いて耳を傾けられることを推奨します。
この後、彼はエド・シグペンを加えたトリオで「ウェスト・サイド・ストーリー」を録音します。 |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)
「ロマンス」(ROMANCE) |
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オスカー・ピーターソン(OSCAR PETERSON)の「ロマンス」(ROMANCE)で
す。
VERVEのLPとしてはオリジナル盤になります。
レコード番号は、MGV−2012。 |
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パーソネルは、ピアノとボーカルにオスカー・ピーターソン、ベースにレイ・ブラウン、ギターにバーニー・ケッセルとハーブ・
エリスという、ドラムスが入る前のピーターソン・トリオです。
このレコードは1953年と1954年いに録音されたもので、ピーターソンによるボーカルが全編に収録されています。彼が
ナット・キング・コールと、コールはボーカルに、ピーターソンはピアノに専念すると約束したという話しはもはや伝説化して
いますが、実はこんなアルバムもあったのでした。ノーマン・グランツならやりかねないことではありますな…。
ピーターソンと言えば、明るく楽しいジャズの代名詞のような存在で、そのドライブ感やダイナミックなプレイは万人の知る
ところです。しかし、マイナー調でどちらかと言うと暗めのそれを好むとされるジャズ・ファンにはそれほど重要視されてい
ないのも、偽らざるところでしょうか。私が中学生の頃、ロック・ファンだったクラスメートが「ジャズで知ってるって言えば、
オスカー・ピーターソンくらいかな…」と知ったかぶりに仰った言葉が今でも脳裏に残っていますが、迂闊にも「やあ、やっ
ぱりピーターソンはいいねえ」などと発言しようものなら、「おまえはジャズが分かっていない」とか「アホか…」というような
言葉を唾棄とともに全国から浴びせられるのがオチかもしれません。「隠れピーターソン」というのが無難なようではありま
す。
しかし、ここは楽しくジャズを嗜むのも善しということで、思い切りミーハーっぽい、この1枚をお薦めしておきます。何せジ
ャケットからして思わせぶりで、騙されてもいいんじゃありませんか? これはCDサイズでは味わえない特典です。
ピーターソンのボーカルは、確かに余芸を越えたレベルにあり、チェット・ベイカーのそれにはやや及ばないまでも、キン
グ・コールに似た声質で寛げるタイプのボーカルです。件の伝説の通り、キング・コールには十分肉迫するレベルのように
も思えます。選曲もいいので、聴き逃す手はありません。
収録曲の中では、どちらかと言うとミディアム・テンポ以下の曲に妙があり、春の日差しを感じるが如き温かみがありま
す。それ以上のテンポの曲ではやや淡白な印象が無きにしもあらず、といったところでしょうか。
長くなりますが、少し曲紹介をしますと、まずはA面3曲目の「One For My Baby」などは、本来ブツブツと閉店間際のバー
でバーテンにクダを巻く酔っ払いの歌なんですが、ピーターソンが歌っているとそれほど嫌味ではなくて、上品な中にもタ
ラタラ風がイッテます。好みは分かれるでしょうが、シナトラあたりの演出過多気味歌唱とは一線を画してはいます。
ほかにお薦めは、B面の「The Things We Did Last Summer」なんですが、巨体のピーターソンが唄っているのを想像す
ると、何ともやるせない気持ちになってしまう歌詞ではあります。「月明かりの湖でボートに乗ったり、大好きな歌を歌った
り踊ったりした去年の夏をずーっと冬のあいだ僕は忘れない…。ウマク行きそうだった恋がどうしてダメになるんだろう…。
去年の夏、二人でしたことを僕はずーっとずーっと冬のあいだ忘れない…。」一体夏のあいだにナニをしたのか知りません
が、冬が済んだら忘れてしまうのかと突っ込みたくもなる、どうにもウレシイ内容なものの、雰囲気こめてしみじみ唄うピー
ターソンに座布団1枚あげてちょー。 |
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